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   最終回

60.またいつか雲の南で

新しい価値を創造する。
口にすることは至極簡単ですが、誰でもできることではありません。
また、全く新しい価値や自分を生み出せるとは思っていません。
すべては過去から未来へ繋がっていく
連続した自分自身の中で培われていくものであり、
自分がやってきたこと以上の事が、突然出来るようになるわけがないからです。

僕のように、自分の能力に限界を感じたり、
将来へのロマンが感じられなくなったら、
一度、大きく環境を変えてみるのもひとつの方法です。
新しい環境が、きっと人生の肥やしになってくれるはずです。

僕は非常にタイミングよく邱先生にめぐり合うことができ、
このコーヒー事業に関わることになったわけですが、
農業や食品加工の専門知識もなく、中国語、会社の設立、
コーヒー農園・加工場の立上げや管理、コーヒーショップ経営等々、
すべてがゼロからの出発でした。
特に誰かに教えてもらえるわけでもなく、
自分の知らないことだらけ、予測のつかないことだらけの中で
真っ暗闇の中をがむしゃらに走ってきました。
もしかしたらその場で足踏みしているだけかも、
という焦りを感じることもありましたが、
遠くに射している光を確かに感じるのです。

邱先生が灯してくれた道標なのか、
時代の流れのその先に光る宝の山なのか、
その姿かたちをはっきりと見極めるにはもう少し時間がかかりそうですが、
暗闇の中を突き進むことに、全く不安はありません。
躓こうが引っくり返ろうが、泣き言を言っている場合では無いのもありますが、
あきらめず前に進み続ける限り、必ず辿り着ける、
と確信してやっているからなのです。

一度きりの人生、大切なものは人それぞれ異なります。
僕の場合、安定した日常と多少の親の期待を犠牲にし、
自分の想像の及ばない世界の、未だ人の通っていない道を進むことを選びました。

僕たちが育てたこの雲南コーヒーで、
いったいどのくらいの人たちに喜んでもらえることができるのだろう?
まだまだ道のりは長いかもしれませんが、
喜んでくれる人たちを想像すればするほど、
なんだか嬉しくなってしまうのです。

今回で一年強続いたこのコラム、終了となります。
好き勝手なことを書いてまいりましたが、僕自身非常に勉強になり、
小さな自分の世界を少し拡げることができました。

素晴しい機会を与えて下さった邱先生、関係者の皆さま、
陰で支えてくださっている東京や中国の邱グループの方々、
共に艱難辛苦を乗り越えてきた仲間やスタッフたち、
不本意ながらも一人息子のわがままに理解を示してくれた両親、
皆さまに心より感謝しております。

そして今までこのコラムを読んでいただいた皆さま、
励ましや共感のメールを送っていただいた皆さま、
どうも有り難うございました。

またいつか雲の南でお会いしましょう。
再見!




むらた こういち

村田 考市

邱公館食品(雲南)有限公司 保山工場長。
東京でPR会社を退職後、アジア横断の貧乏旅行へ。その時「こんな国二度と来るか」と思った中国だが、邱先生に拾っていただいたご縁で、2003年より、中国語も話せないまま雲南省の山奥にあるコーヒー農園での生活が始まる。今では日本人と言ってもあまり信じてもらえない事が多く、少し困惑している。


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