世界のコーヒー産地で、最も生産量が多いのはブラジルで、
ブラジルだけで世界のコーヒー生産量の約3割を占めています。
1908年、ブラジルで日本人を対象とした新移民法が制定され、
日本人が移民としてブラジルにわたってから、来年が100周年となります。
この歴史の中で、多くの日本人移民の方々がコーヒー生産に携わり、
産業振興に大きな貢献をしてこられました。
このブラジルでコーヒー開拓をしてきた日本人で、
恐らく最も有名で最も成功された方である下坂匡さんが、
先日、邱公館のコーヒー農場を訪ねてきてくださいました。
下坂さんは1955年、18才の時に移民船に乗って家族とともに日本を離れ、
ブラジルでの永住を決意されました。
そして、未開の地・不毛の地と呼ばれる「セラード」という広大な土地で、
数年掛けて土作りから始め、
1987年にはブラジルの大統領が訪問し感謝の言葉を述べられるほど、
ブラジルを代表するコーヒー農場に育て上げてこられた方です。
さらにすごいのは、今や立派なブランドを確立しているにもかかわらず、
品質や効率をより向上させるために、常に新しい事に挑戦されているのです。
僕たちとはスケールも歴史も桁違いですが、
またとないこの機会、いろいろと質問させていただきました。
特に目からうろこが落ちたのは、目につかないところに対する注意力でした。
産地で生活していると、コーヒーの収穫一つを取ってみても、
いかに楽にできるだけ早く且つ多く現金化するか、という
目先の利益を最優先する人たちばかりです。
しかし、視点を「目の前」から「数年後」に変えると、
見方や管理方法が大きく異なってきます。
今や下坂農場で採れるコーヒーは、
周辺農場の平均収穫量の約4倍も多いとのことです。
下坂さんは今回初めて中国のコーヒー産地を訪ねられたようですが、
雲南にこんなに沢山、しかも良質のコーヒーがあるとは思われなかったようです。
しかし、産地やコーヒーの樹に良いものがあっても、その加工や管理方法がまだまだだと、
邱先生と同じようなことも言われていました。
僕が産地に来て初めて、本当の本物のコーヒー生産の専門家であり、
数々の苦労や困難を乗り越えてきた開拓者のお話をお伺いすることができ、
コーヒー作りがますます楽しく感じられるようになったのは言うまでもありません。
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