警察の厳しい取り締まり、もちろん大きな成果もあげています。
中国ではここ数年で自動車が急速に普及してきたこともあり、
いたるところで交通事故が頻繁に見られました。

先の見えないカーブの手前から追い越しをかけたり、
いきなり急停車したり、車道への飛び出しはいつでもどこでも当たり前、
こちらがどんなにゆっくり安全運転していても、運転中は常に危険と隣り合わせです。

以前は保山市内から加工場までの約70ｋｍの間に、
毎回必ず１～２台はスリップや衝突などで車が転がっていました。
一番多い時で、雨の日でしたが、15台以上の事故を一度に見たことがあります。
ある時など、スタッフの乗っていたバスの目の前のバスが、
飛び出してきた対向車を避けきれず、崖から落ちていったということもありました。

それがここ一年くらいで、事故を見ることがすっかり少なくなりました。
人々が大分慣れてきたのと、
厳しい取締りや多数の事故で不適格者が淘汰されてきたからでしょう。

僕も一度だけ、スリップ事故を起こしたことがあります。
朝早く市内に出るために、朝露に濡れた峠道を越えている時でした。
助手席に座っていたスタッフの子がひたすらおしゃべりしてくるので、
朝から良くしゃべるヤツだなあ、と少しイラっとした瞬間に、
カーブで後輪を滑らせてしまい、そのまま反対車線に弧を描き
溝に脱輪してしまいました。
もし対向車線にトラックやバスが来ていたら、と思うと、
自分の悪運の強さに惚れ惚れしてしまいます。

助けを呼ぼうと、方々に電話をかけていると、
車が止まり、「おーい、脱輪かい？手伝ってやろうか？」
と親切なおじさんが声を掛けてくれました。
「有難うございます。お願いできますか？」と応じると、
「じゃ、30元」
「・・・ハ？」
「30元でどうだって言ってんだよ」といきなり値段交渉から始まりました。
そのくらいでしたら（500円弱）、急いでいましたし快く承諾し、
無事、車は車道に戻ったのですが、
「思ったより大変だったから80元な。」と倍以上に値上げをしてきました。
僕もすかさず「思ったより簡単だったから20元でしょ。」と言い返し、
結局30元しか払いませんでしたが、
商魂すさまじきかな、恐るべし中国人です。

この事故で何が良かったかといいますと、
この時以来、スタッフの子のおしゃべりがぴたっと止んだことです。
今は心安らかに運転に集中できるようになりました。