さて話は産地に戻りますが、こんな雲南奥地の加工場でも、
ごくたまに日本や欧米からのお客様がお見えになる時があります。
そんな時、大別してふたつの反応に分かれます。

ひとつは、「こんな山奥でひとりで大変だね〜」
と励ましてくださる、事業の大変さを良くご存知の方と
「こんな大自然に囲まれてのんびりできていいね〜」
と羨ましがってくださる、都会の色々なストレスにお疲れの方(失礼)のふたつです。

確かにここは空気もとびきり澄んでいて
小鳥のさえずりと、花や大地の香りが漂ってくる最高の癒しの環境にあります。
次の旅行のご予定にお悩みの皆さま、
邱公館のコーヒー農園ツアーに参加して、大自然のマイナスイオンに包まれてみませんか？
採れたてのコーヒーもサービスいたしますよ！

しかし僕自身に関してはそんな事は言っていられません。
毎日緊張と悩みの連続で、安心できることは何ひとつなく、
現地の人たちと日々静かな（時に激しい）戦いを繰り広げているのです。
実際、そのうち石になってしまうのではと思うくらい、
体が日に日に硬直していくので、いつも一人で変な体操をしています。
そんな僕の唯一の癒しが、邱先生に秘密で飼っている２匹のゴールデンレトリバーです。

雲南写真家の伊藤真理さんから2005年に子犬を譲ってもらい、「金太郎」と「銀次郎」と名づけました。
スタッフにも呼び方を教えたのですが、タイ族語で呼んだり北京語で呼んだりしているので、未だに名前を覚えてくれません。
一日の仕事が終わって犬たちが待っている宿舎のドアを閉めた瞬間、僕の人格は変わります。
ここでは２匹の犬だけが僕のだらしないへろへろな姿を知っています。
そしてこの姿をスタッフに見られたとき、僕のここでの権力は消滅するのです（多分）。

…くだらない話ですみません。