僕が産地の人たちにコーヒーを飲ませようと四苦八苦するのは、
僕のおせっかいや自己満足でもありますが、
彼らにコーヒーの品質の良し悪しを
分かってもらいたいからでもあります。
どうせ自分が飲むわけじゃないし、
どのように収穫して加工しているかまで
誰も分かりっこないし、
それでも買ってくれる連中がいるんだから、と
彼らもいい加減になるに決まっています。
雲南の南の産地では大手のネスレ社を筆頭に、
現地の人たちに品質向上の指導や教育をしているとかで、
生産意欲も高まってきていると聞きます。
僕のいるエリアでは進出当時、
僕たちのやり方は全てが農民たちにとって初めてのことで、
最初は鼻で笑われたり、作業の抵抗にあったりしたものです。
しかし、僕たちのグリーン豆は誰が見ても彼らの豆とは明らかに異なる美しさで、
ざまあみろと心の中で叫びながら、ひたすら黙々と作り続けました。
彼らも最初は半信半疑でしたが、
“あの日本人のところは結構いい商売をしているらしいぞ”
とどこからともなく噂が流れ始め(火のないところから煙がたった感じですが)、
自分たちで率先して収穫の質を高めたり、
グリーン豆の選別を始めるところがちらほらと出てきました。
その方が高く売れる!と一部の人たちが気づいたのです。
これはとても良い傾向だと思います。
確かに、手間をかける分だけ彼らも値段を吊り上げてくるでしょう。
しかし良いものは高く売れる、という当たり前の原理を実体験として知っていけば、
産地全体が活性化し、いつしか良質コーヒーの産地として
世界に認められる日が来るかもしれません。
品質向上の努力もせず、コーヒーを飲んだこともないのに、
「オラのコーヒーは産地で一番品質も良くて香りも最高だべ!」
と言い切る寝ぼけた農民たちを目覚めさせるためにも、
僕たちが率先して良いコーヒーを作っていく必要があるのです。
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