第304回 (旧暦12月23日)
ツバキの花のちょっと変わった利用法
つい先日、ヤブカンゾウの新芽を
3か月も早く目にした話を書きましたが、
どうやら今年の冬は全体に植物サイクルが
前倒し傾向にあるようで、鎌倉でもスイセンの花が
もう満開に近いほど咲き乱れています。
また、気象庁では、ヤブツバキの開花日を
生物気象観測指標のひとつに定め、
全国79地点で観測を行っていますが
、山型県酒田市で例年より4か月近くも早く開花したのをはじめ、
宮城県仙台市で84日、茨城県水戸市で75日、
千葉県銚子市でも29日と、
いずれも例年(過去30年間の平均)と較べて
大幅に早い開花が観測されているようです。
もちろん、鎌倉でも、もうとっくに咲き始めていますから、
仙人もときどき花を摘み採って
花びらピールやテンプラにして楽しんでいます。
その花びらピールや花茶、またツバキ油については
大分前(第6回、15回)に書いたことがありますので、
今日はツバキの花のちょっと変わった利用法を
紹介しておくことにしましょう。
それは、数年前に新潟県の佐渡島へ行った折、
土地の古老に教えられたことですが、
むかし、この地ではツバキの花を
「香」として使っていたというのです。
少し前までの日本の農山村、漁村では、毎朝仏壇に膳を供え、
香を焚いて祀る習慣が踏襲されていましたが、
毎日のこととなると年間を通じれば
かなりの量になることもあって、
その香剤はどの地域でも身近に入手できる植物を利用して
各家庭それぞれに自家製のものを使うのがふつうでした。
葉や枝を香剤として用いる植物としては、
農山村ではシキミやカツラ、ハイイヌガヤ、ネムノキなどが、
海浜地帯ではハマゴウが知られているものの、
ツバキの花が香剤になるということは、
仙人もそのとき初めて知ったのです。
作り方は、木から落ちたツバキの花を拾い集め、
真ん中に糸を通して数珠状に連ね、
これを風通しのよい軒下などに吊るしてカラリと乾燥させ、
臼で粉に挽いて使うのですが、仙人が試してみたところでは、
花のせいか、シキミやハマゴウなど葉や枝を使うものとは
少し違った香りがします。
しかし、植物の香りというものには
精神を落ち着かせるはたらきがありますから、
ツバキの花を見つけたらぜひ一度試してみるとヨロシイ。
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ヤブツバキの花 |
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