第268回 (旧暦11月3日)
「元気」が出てくるネズミモチコーヒー
つい先日のことですが、
テレビの「1か月1万円生活」のスタッフから、
「コーヒーの代用となる植物があったら教えてほしい」
という相談を受けました。
代用コーヒー(カフェインレス・コーヒー)については、
このコラムでも「タンポポコーヒー」と
「ドングリコーヒー」について紹介したことがありますから、
このふたつの作り方を教えておいたのですが、
実は、コーヒー代わりに飲用される植物がもうひとつあるのです。
それは、ネズミモチの熟果を乾燥させてから炒り、
これを粉にひいたもので、コーヒーなど高嶺の花であった
戦中・戦後の一時期、色が似ているところから、
コーヒーに飢えていた一部の都市生活者の間で
大いにもてはやされたものでした。
ネズミモチというのは、関東地方以西の暖地に自生するほか、
庭や公園などにも植えられるモクセイ科の常緑低木ですが、
葉がモチノキのそれに似ており、果実の色や形状、
大きさがネズミの糞に似るところから、
古くはネズミモチノキと呼ばれ、
それがつづまってネズミモチと言われるようになったものです。
さて、そのネズミモチコーヒーですが、色こそ似ているものの、
もちろん味も香りも、コーヒーとはまるっきり違いますから、
言ってみれば、タバコが欠乏した時代に
トウモロコシの葉やイタドリの葉を紙で巻いて
タバコ代わりに吸っていたのと何ら変わりがありません。
ところが、このネズミモチの果実には、
カフェインの代わりにウルソール酸、
オレアノール酸アセチルオレアノール酸などが含まれており、
古くから強壮・強精の薬として利用されてきましたから、
コーヒーの代用として飲んでいるうちに
「元気」が出てきてしまうことになるのですナ。
ちなみに漢方では、ネズミモチの葉を
「女貞葉(じょていよう)」、
果実を「女貞子(じょていし)」と呼び、
ともに強壮、強精、消炎、鎮痛などの薬として使用するほか、
民間でも、乾燥果5〜10gか、
乾燥葉10〜15g(ともに1日量)を500ccの水で煎じ、
内臓疾患(胃腸、肝臓)や神経痛、
リウマチの痛み、老化防止などに服用する療法があります。
してみると、予算の都合とはいえ、
ネズミモチの代用コーヒーを飲むことになるとすれば、
「1万円生活」も思わぬ効用が
得られることになるのではありますまいか。
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ネズミモチの実 |
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