蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第269回 (旧暦11月4日)
クズがはびこる本当のワケ

いま鎌倉の山を歩くと、陽当たりのよい斜面は
びっしりクズの葉で被われていることに気が付きます。
クズは、マメ科のつる性の多年草で、
日本各地にフツウに見られますが、
そういえば「葛原が岡」という地名が残るほどですから、
昔から鎌倉地方一帯にはクズが多かったのかもしれません。

前にも一度書いたように、クズの若芽や花は食用にしますが、
実は、クズで最も利用価値の高いのは、
若芽や花ではなく根茎なのです。
クズの根茎には良質のデンプンが含まれていて、
これから抽出して精製したものが本来の「葛粉」であり、
葛湯や葛切り、葛餅なども、
もともとはこの野生のクズから取った
クズデンプンから作られたものでした。

しかし、現在「葛粉」として売られているものの大方の正体は
ジャガイモデンプンで、葛切りや葛餅の多くも
これが使われるようになってしまっているのです。
ちなみに、クズの根茎には、10〜14%のデンプンのほか、
イソフラボンのダイジン、ダイゼイン、プエラリンなどが
含まれていて、発汗、解熱の作用があり、
漢方ではこれを「葛根(かっこん)」と呼んで、
カゼ薬として有名な「葛根湯(かっこんとう)」や、
大腸炎などに用いる
「葛根黄連黄湯(かっこんおうれんおうごんとう)」などに
処方されています。
また、民間でも、関節の凝りや痛み、頭痛、じんましんなどに
葛根8〜10g(1日量)を300ccの水で煎じて服用する、
などの療法が古くから行われてきました。

ところで、この有用なはずのクズが、
現在ではなぜか「歓迎されざる植物」になっているのです。
それは、繁殖力が旺盛で、樹木にからんで
木を枯らしてしまうからですが、実をいえば、
こうした現象が顕著に見られるようになったのは、
クズの根から葛粉をとることを止め、
ジャガイモデンプンで代用するようになって以後のことなのです。
つまり、昔のようにクズの根を掘って葛粉を利用していれば、
山の樹木も傷めることなく自然が保てるということで、
鎌倉の山がこれほどクズで被われるようになってしまったのも、
「風致保存」という名のもとに
自然に一切手を入れなくなってしまった結果だと
いえなくもないのです。


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