第270回 (旧暦11月5日)
クズの根を掘って葛湯を作ってみませんか
昨日は、安価で大量生産されるジャガイモデンプンに席捲され、
本来の葛粉を取る習慣が失われたことによってクズが繁茂し、
これによる樹木の枯死被害がふえていることを書きました。
そこで今日は、クズの根をセッセと掘って、
自分で本物の葛粉を作る方法を
紹介しておくことにしようではありませんか。
つまり、メイワク者のクズを掘って樹木の被害を防ぐとともに、
その根茎から正真正銘の葛粉を取り出して料理や健康に役立てる、
という一石二鳥の作戦です。
しかも、クズの根茎は、これから冬にかけて
デンプンをたっぷり蓄える時期になりますから、
このクズ掘りは冬場の野遊びとしてもおすすめでしょう。
さて、クズの根堀も、前に紹介したヤマイモ掘りと同様に、
まず、つるをたぐって
根茎の所在をつきとめることから始まりますが、
ヤマイモと違って、クズの根茎は縦には伸びず、
地表に近い地中を横に這っていますから、
ヤマイモ掘りと較べると
「掘る」労力はウンと少なくてすむものです。
とはいっても、クズの根茎は、大きなものだと太さが20cm、
長さは2mにも及ぶものがありますから、
その掘り出しはやはりなかなかの力仕事になることは
変りありません。
こうして掘り出した根茎は、水で洗ってていねいに泥を落とし、
水気を切ってから、固い石の上で
繊維がこなごなに砕けるまで金づちで叩き潰します。
そうすると、根茎の繊維と、白っぽい粉上の物質とに
区別できるようになりますから、砕けた繊維を取り除き、
粉上の物質をかき集めて木綿の布で包み、
この包みを水を張った容器に漬け、
水の中で両手で強くしごいてでんぷんをもみ出してやるのです。
もみ出しを終えた水をしばらく放置しておくと、
やがてデンプンが沈殿し、濁った水と分離しますから、
この濁り水を捨てて新たに水を注ぎ足します。
以下、同じことを何回も繰り返してやると、
最初のうちは茶色に濁っていた水も
しだいに濁りが薄くなってきますから、
水が透明になるまでこれを続けてください。
この方法で沈殿抽出したデンプンは
「灰葛(はいくず)」と呼ばれ、
茶色っぽい色とクズの匂いが残ってはいますが、
立派に本物の葛粉として利用できます。
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