第271回 (旧暦11月6日)
憶えておくと重宝するナンテンの効用
早いもので、あと2日で師走です。
これからの季節は1日ごとに寒さが厳しくなって
風邪をひきやすくなりますから、
くれぐれも気を付けなければいけません。
気温だけを見ると12月の気温は
3月のそれと似たようなものですが、
3月より12月のほうが風邪を引きやすいのは、
秋から冬に移る12月のほうが寒さに対する抵抗力が弱いからです。
そこで、これからは折にふれて風邪に効用のある薬草を
いくつか紹介していくことにしたいと思いますが、
まず最初は、いま紅い実をつけている
ナンテンを取り上げることにしましょうか。
ナンテンは、中部地方の暖地に自生するほか、
庭木としても植えられるメギ科の常緑低木で、
正月飾りにも使われる馴染のある植物ですから
誰でも知っているでしょう。
市販されている「のど飴」や「風邪薬」の中にも
ナンテンを使ったものが何種類もあるように、
ナンテンの実にはアルカロイドのドメスチンやナンテニン、
プロトピンなどが含まれていて、
古くから咳止めの薬として利用されてきた歴史があります。
漢方でも、今ごろから冬にかけて採取した果実を
天日乾燥させたものを「南天実(なんてんじつ)」と呼んで、
風邪、ゼンソク、百日咳などの咳止めやのどの痛みに、
1日量5〜10gを500ccの水で煎じ、
3回に分けて服用する療法があります。
なお、ナンテンの実には紅い実と白い実とがあり、
白い実のほうが効果が高いとする巷説がありますが、
これは、白い実のほうが少ないことによるただの風説に過ぎず、
実際の効果は赤も白も変わりはありませんので、
紅い実も躊躇なく利用するとヨロシイ。
一方、ナンテンの葉には
ナンジニンやナンテノサイドなどが含まれていて、
解毒や防腐の作用があり、魚などを煮るときに、
ナンテンの生葉を加えてやると傷みにくいという効果があります。
また、祝い事の折、ナンテンの葉を添えて赤飯を配るのも、
「これを食べて中毒する心配は無用です」という意味と、
「万一お腹をこわしたら、
このナンテンの葉を噛んで治してください」
という意味が込められているのです。
ちなみに、ナンテンの葉の青汁には、
猪口1杯分を服用すると吐き気を鎮め、
2杯飲むと食べたものを嘔吐する作用がありますから、
食中毒の応急処置として覚えておくと役に立ちます。
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