蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第186回 (旧暦7月24日)
粉食と粒食

しばらく前に「すべての文明は穀物によって誕生した」という
話をしたことがありますが(第92回96回)、
その穀物の食べ方から見ると、
世界の民族は「粉食民族」と「粒食民族」とに
分けることができそうです。

これは、それぞれの民族が主食とする穀類の種類によって
決まってくるもので、大雑把にいうと、
ムギ食文化圏の人たちは粉食民族、
コメ食文化圏の人たちは粒食民族、
ということになるのでしょうか。

なぜかといえば、こういうことです。
ムギ類のほとんどは、外皮が硬くて
粒のままで食べることができず、
いったん粉にひいてからパンなどに加工して
食べなければなりません。
そのため、ムギを主食とする民族は、
古くから製粉技術を発達させ、
すぐれた粉食文化を作り上げてきたのでした。

これに対して、コメという穀物は粒のままで食べられますから、
コメを主食とする民族はコメ以外の穀物も
できるだけ粒のままで食べようとする習慣を
身に着けてしまいました。
たとえば、コムギもオオムギも
日本にはコメにやや遅れて入ってきましたが、
粒食できるコメを食べ慣れていたために、
もっぱら食用されてきたのは
粒のまま食べられるオオムギのほうで、
これをコメに混ぜて炊くかたちで利用してきたのでした。

また、コムギとコメに次ぐ生産量のトウモロコシは、
ムギ食文化のヨーロッパにも、またコメ食文化圏の日本にも、
ずっと後になって移入されてきましたが、
そのトウモロコシを食べるとき、
ヨーロッパではやはり粉にひいて利用する方法が
定着したのに対し、
日本では粒のまま食べる方法が選択されてきたのです。

ところで、このトウモロコシといえば、それを食べるとき、
ほとんどの人は果実にくっついている
モジャモジャしたヒゲ(花柱)を果皮と一緒に
捨ててしまっているのではないでしょうか?
実は、トウモロコシの花柱には利尿作用のある
硝酸カリウムなどが含まれており、
漢方では「南蛮毛(なんばんもう)」と呼んで
腎炎、肝炎糖尿病、腎臓結石、胆石などの薬として
利用されているほか、欧米でも「コーンシルク」と呼んで
腎炎などの利尿薬とされていますから、
そのケがある人は捨てずに利用してみるとヨロシイ。
用法は、1日量として乾燥した花柱10gに湯を注ぎ、
お茶代わりに飲用します。

トウモロコシ茶 トウモロコシの皮とヒゲをむしる

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