第187回 (旧暦7月25日)
クズの花の利用法を教えます
鎌倉ではぼつぼつクズの花が目にとまるようになりました。
クズ(葛)は、萩(ハギ)、薄(ススキ)、撫子(ナデシコ)、
女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)、桔梗(キキョウ)と
ともに秋の七草のひとつとして万葉の時代から
日本人の心に親しまれてきた植物です。
むかしは、根からクズデンプン(葛粉)をとり、
茎の繊維で布を織ったり(葛布=くずふ)したほか、
葉を馬の飼料にするなど、
その全草が余すところなく利用されてきましたが、
葛粉も葛布もジャガイモデンプンや化学繊維などに
それぞれとって替わられ、今では野山に生えるまま放置され、
誰も見向きもしなくなってしまいました。
しかし、漢方薬の代表選手のひとつである
「葛根湯(かっこんとう)」は、
このクズの根の皮をはいで乾燥させたものが原料ですし、
花は健康茶や薬酒にして飲用すると
鎮静、安眠、酔いどめ、美容などに効果を発揮しますから、
この日本伝統の有用植物を荒れるにまかせて
うっちゃっておくのはモッタイナイというものではありませんか。
仙人はそう考えて、10年ほど前から冬に根を掘って
ホンモノの葛粉を作り、夏には花を摘んで花茶と花酒を
作ることを続けています。
このうち、葛粉作りは冬の仕事のため
日を改めてご披露することにして、
今日は葛の花茶と花酒の作り方を紹介しておくことにしましょう。
まず、花茶のほうは、開花し始めた頃に房ごと摘み採り、
水洗いせずそのまま天日に干してカラリと乾燥させ、
湿気のこない容器に入れて保管しておき、
この乾燥花5g(1回量)を急須か土瓶に入れ、
熱湯を注いでお茶代わりに飲用します。
この花茶は、宿酔(ふつかよい)に
ナカナカの効果がありますから、
常連の人はぜひ試してみることですナ。
次に、花酒の方は、お茶の場合と同様の時期に摘んだ房を
水洗いせず生のままビンに入れ
(酒1.8Lに対して1.2L、氷砂糖100g)、
35度のホワイトリカーを注入して密封し、
3か月冷暗所で熟成させますが、
中身の花は1週間で取り出しておきます。
この花酒は、ほのかなアメジスト色に仕上がり、
疲労回復、安眠、精神安定、美容などにヨロシイ。
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クズの花 |
クズの根 |
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