第185回 (旧暦7月23日)
自分の身体を「物差し」に利用する術
きれいな花、かわいらしい木の実、ビックリするような大木、
ハッと目を奪われる小石、そして時には鳥や獣たちの遺骸……。
アウトドアのフィールドでは、
ふだん目にすることのないいろいろなものに出会います。
こんなとき、色や形など眼で捉えた記憶だけでなく、
それの実際の寸法や大きさをその場で測っておくと、
帰ってから図鑑などで調べるときに
大きな助けになることが少なくありません。
そのため、仙人の知人には、
野山へ出掛ける折りはいつも巻尺を携帯する人間がおりますが、
仙人は「余計な道具」はできる限り持たない主義なので、
巻尺などは携行せず、すべて自分自身の「身体」を利用して
モノの寸法を測っているのですナ。
つまり、自分の足の寸法は靴を買うときに必要ですから
だれでも知っているでしょうが、この足のサイズとおなじように、
自分の指や手のひら、腕の長さなどについても憶えておけば、
リッパな「物差し」として活用できるというわけです。
ちなみに仙人の場合を例にとれば、
手の小指の爪の幅が1cm、おなじく親指の先の部分の幅が2cm、
手の小指の長さが5cm、手の親指と人差し指を広げた幅が17cm、
親指と小指を広げた幅だと21cm、
腕の肘から手首までの長さが25cm、
そして、肘から中指の先端までが43cm……
といったことになります。
また、両腕を水平に広げた長さは、
ほぼその人の身長に等しいため、これを憶えておけば、
大木の幹回りなど円形のものを計測する場合にも
役にたつというものです。
こうした「自分の身体」を利用した計測法のことを
「体測法(たいそくほう)」と呼びますが、
実は、この「体測法」こそが
現在の物差しのルーツだったのですゾ。
たとえば、人間の骨格のうち、
前腕を構成する2本の骨の小指側に位置するものを
「尺骨(しゃっこつ)」と呼びますが、
「尺」という長さの単位は、
この骨の長さが基準となって生まれたものだったのです。
この連載では、アウトドアで自然のものを活用する術を
いくつか紹介してきましたが、
実は、自分たちの身体そのものも
こうした形で活用できるということも
ついでに憶えておくとヨロシイ。
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