| 第358回麻婆豆腐めぐり その1
 なぜ麻婆豆腐巡りか
 
 第352回、353回で取り上げた「趙楊」は、私のその後の店訪問に大きな影響を与えてくれました。
 今まではそれほど中華料理店に行く機会は多くはなく、
 特に四川料理は少なかったのですが、
 現在は極端に言うと、訪問する料理店の半分は
 四川料理店になっております。
 花椒(ホアジャオ)や四川唐辛子、四川豆板醤などその独特の調味料が癖になってしまったようで、
 主に昼間時ですが麻婆豆腐の評判の良い店を中心に
 突入しまくっております。
 まだまだ極めたわけではありませんが、中間報告として言わせていただくならば、
 「四川料理店」と銘打った各店の方向性は
 まさにバラバラと感じております。
 四川料理といえば、鉄人・陳健一氏の父君、陳健民氏。
 日本へ四川料理を広めた中心人物だそうですが、
 その際本場の辣(ラー 辛さ)や麻(マー 痺れ)を
 日本人向けにマイルドに修正してしまったのが、
 今、学生街や街場にある味噌味だけの麻婆豆腐です。
 最近は本物志向が高まってきたようで、
 本場の味を知り、本物を求める客が増えたのでしょう。
 今までの「麻婆豆腐」とは区別した本場物に近いという
 「陳麻婆豆腐」なるものがメニューに各店に登場しております。
 陳健民氏はよかれと思って食べやすく修正したと思いますが、それにより、日本の「麻婆豆腐事情」は
 何十年も遅れてしまったといったら、大げさでしょうか。
 その他、四川料理のイントロ的な存在である「担担麺」も、実は本場四川では汁がないということも知りました。
 ほとんどの料理店では未だに「汁あり」がでているようですが、
 店によって要求すれば、
 「汁なし」を出してくるところもあります。
 しかし、この「陳麻婆豆腐」や「汁なし担担麺」は、本場四川風と銘打っても
 各店によってかなり味わいの方向性が異なっております。
 よくマー、ラーが利いていてうまい、というジャーナリストがいますが、
 「趙楊」のように本気で利かしている麻婆豆腐は、
 慣れない人には想像を絶するものに感じるはずです。
 完食できる人は少ないのではないでしょうか。
 このシリーズでは、陳麻婆豆腐を中心に訪問した店を簡単に取り上げていきたいと思います。
 まずは、日本の四川料理の産みの親の直系である「四川飯店」系列を次回取り上げます。
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