| 第317回あの店は今・・・ ラミティエ
 辛口、悪口と言われ続ける私友里として、褒めた店を思い出すのは難しいものです。(笑)
 そんな数少ない店の中で、
 私はこのコラムの連載初期、確か第5回で
 高田馬場の「ラミティエ」を取り上げました。
 消費税を含めた総額表示の時代ではありませんでしたが、
 前菜とメインの2皿で2千円。
 ポーションも大きく、味もビストロ風にしっかり。
 ワインも安いものが多くCPの代表選手と紹介しました。
 日頃読者の方からメールをいただくことが多いのですが、フレンチ同業者の方からご指摘を受けたことがあります。
 このラミティエのシェフは、
 原価率を5割近くに上げていると公言している。
 普通の店では考えられないことで、
 そのようなアンフェアな店を取り上げるのはいかがなものか、
 というものです。
 利益をいくら乗せるか、損してでも営業を続けるのかは
 経営者の自由です。
 まして一般客の立場でしか考えていない友里としては、
 結果CPが良ければフェアもアンフェアもない、
 料理人と親しくなっているような
 料理評論家、フード・レストランジャーナリストのほうが
 読者に対してフェアではないというのが私の考えです。
 ところが最近、山本益博氏がある雑誌でこのシェフに、「そろそろ無理せず値上げをしたらどうか」と提案したと
 自慢しておりました。
 一般客が主体の購買層であるこの雑誌で、
 店側に軸足を置いた発言、シェフに恩を売りたいのか、
 彼の発言の真意は私の常識の範囲を越えていますが、
 その後価格や料理、営業方針に変化がでてしまったか、
 久しぶりに再訪しました。
 夜の2回転営業に変りはありませんでしたが、7時半まえに訪れても入店できました。
 以前より混み合ってはいないようです。
 相変わらず座りにくい椅子に、紙クロスのテーブル、
 荷物は各個人の足元かソファと
 そのサービスや内装にかわりはなく、
 料理も2100円(消費税含入)のまま。
 前菜、メインと選べる種類は11種で
 かえって増えたように感じます。
 選択肢が増えオーダーに迷っている時、隣客へ運ばれてくる料理を見て
 この店の営業方針に変更がない事を確認しました。
 お皿にふんだんに盛られた付け合せの野菜、
 主役の料理もかなりのポーションです。
 計量したわけではないですが、
 以前よりも量がふえているのではないでしょうか。
 ただし主にメインですが、追加料金の設定が何種かありました。
 以前にはなかった骨付き仔羊のロースト(+735円)は
 量、火加減、塩、充分満足するでしょう。
 前菜の兎のパテもそのポーションに驚きました。
 先日食べた「サン パウ」の10分の1の価格でこの満足感。
 しかし味がしっかりしていますから、
 「サン パウ」に行くなら
 「ラミティエ」へ10回行けとは申しません。
 ワインも安い。ノンヴィンシャンパーニュのゴッセが5040円。
 仕入れ値に利益はのっていますが、
 普通の店ではちょっと考えられません。
 スティルワインも安い。
 3千円くらいから5千円強。
 若いですがボルドーの格付けもカバーしています。
 南西地方のワインなど3150円。
 この銘柄は倍で出している店も良く見かけます。
 ますますワインが安くなったような気がしました。
 量も充分、ワインも適度に飲んで4千円、
 追加を払って高いワインを一人で1本飲んでも
 8千円にしかならないでしょう。
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