第114回
まったく違った東京の「シュクルート」
第111回で同じ料理や食材名でも
国が違うと味が違ったりすると書きました。
だからこれ、日本にやって来た外国人が
日本で同様な体験をすることもあります。
6年前、オリヴィエと彼の友達ミッシェル、
それに息子と私の4人で日本へ遊びに行った時のこと。
弟一家と会うため、
恵比寿ガーデンプレイスで待ち合わせをしました。
この頃東京の新名所だったので、私たちは観光も兼ねて行きました。
生粋のフランス人である2人は、
まずここのフレンチ・レストランに目を見張りました。
あまりに忽然と存在したことと、
有名フランス人シェフの東京店であるのに驚いたわけです。
互いに子連れなので弟達とはビヤホールに入りました。
日本語でわいわいやる私たちを余所に、
フランス人2人がメニューを見て選んだのが「シュクルート」。
フランスではアルザス地方(ドイツとの国境地域)の名物料理です。
と同時に、全国的には
ブラッセリーなどで食べる人気の外食メニュー。
その量ときたら、
きっと見ただけでお腹いっぱいになるに違いありません。
家庭で食べる場合は肉屋さんでシュクルート(キャベツが素材)、
ソーセージや豚肉のロースト類を買います。
鍋にそれらをすべて入れ、
白ワインを加え(ビールでも美味)温めて食べます。
それに茹でたじゃが芋も欠かせません。
オリヴィエは何回目かの東京だったし、
ミッシェルも60年代に日本を訪れたことがあります。
だから日本の「つまみ」のポーションを知っていると思っていました。
スペインにはタパという小皿料理があるし、
ギリシャやキプロスにもそうした酒のつまみ的小皿料理があります。
でもフランスにはありません。
フランスでアペリティフ(食前酒)は習慣ですが、
その際つまみはナッツ類やクラッカーなど、日本でいう「乾き物」。
少々気張るとカナッペとか、
一口大のパイやタルトのこともありますが、
いろいろ小皿が並ぶわけではありません。
「乾き物」であればそれ一色。
パイやタルトは大皿にきれいに並べるといった具合です。
そして出てきたのが、
小皿に一つまみのシュクルートに1本のフランクフルト。
それを見た二人は笑い出しました。
「エーこれが日本のシュクルートなのか。
驚いたねェ。シュクルートとはいえないよ」
と、半分騙されたといった面持ちで言い放ったのでした。
今はもうこの名のメニューはないようです。
変わりにザワークラウトといった名がありました。
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