第945回
「新商品の開発には深層心理学的アプローチが必要」
前回紹介した渡部昇一さんの
『人の上に立つ人になれ』という本を読み進むうちに、
邱さんが昭和47年の時点で書いた
「年をとったらデパートの隣に住もう」
という同じ趣旨の文章に出会い
びっくりしました。
「もし私が実業家なら、
田舎暮らしなど念頭におかずに事業計画を立てる。
たとえば新宿の歌舞伎町あたりにビルを買って、
上の階に老人ホームをつくる。
下の階にはラーメン屋があったり、
焼き鳥屋や居酒屋、喫茶店と飲食店は
何でもそろっていて、
映画館まで併設されているというのはどうだろう。
時々は、ちょっとエッチな映画が上映されたりすれば、
老人たちには楽しいところではないかと思う。
気が向いた時にエレベーターで下りれば、
すぐ目の前に映画館があったり、
映画が終ったら併設のすし屋や
そば屋へ入れたりする老人ホームなんて、
まるでワンダーランドのようで、
これなら当たると思う。
また介護してくれる若い人も
嫌がらずに来てくれるのではないか。
老人ホームを
『山青き、水清き』ところにつくってしまうから、
若い人に敬遠されるのだ。
新宿や渋谷あたりなら、
誰も文句をいわずに来てくれると思うのだが、
どうだろうか。
それはともかく、普通の人は、
周囲にある程度の刺激があったほうが暮らしやすい。
だから、年を取ったなら、なるべくなら
都心に住むことを考えたほうがいい。」
(渡部昇一『人の上に立つ人になれ』平成2年)
渡部昇一さんは
邱さんの本が出たら買うとおっしゃる
邱ファンのお一人ですし、
また実際に読んでみると
いつでも快適な気分にさせてくださる方なので、
私は渡部昇一さんの本も、
たいてい読んでいますが
この文章の主張は
邱さんの見方、提言と共通しています。
そして商売や事業について考えるときに、
人間の心理に対する深い洞察が大切なんですね。
邱さんは『お金があって気が利いて』という本で
「ヒット商品の開発には
深層心理学的アプローチが必要です」
とおっしゃっていますが、
事業を考える上で
人間の心理の洞察は欠かせないのですね。
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