第108回 (旧暦4月26日)
玄米食のもうひとつの落とし穴
今日はまたコメの話に戻ります。
前回(第104回・5月22日)では、
ブドウ糖が体内でエネルギー化するためには
ビタミンB1が必要であり、その意味で、
精白米食よりも玄米食のほうが
理にかなっていることを述べるとともに、
ただし、その玄米食も圧力釜で炊いたのでは
せっかくのビタミンB1の半分以上が破壊されてしまい、
これが玄米食の落とし穴になっていると書きました。
それでは、玄米を食べるとき、
圧力釜を使わずに炊けばすべての問題が解決されるかといえば、
実はもうひとつヤッカイな問題があって、
これもまた玄米食の大きな落とし穴になっているのです。
それは、フィチンという
耳慣れない名前の物質に原因するのですが、
このフィチンというのは、
土壌と植物体の中だけに含まれている有機化合物で、
植物体ではその多くが種子の中に含まれる傾向があり、
イネの場合もその種子であるコメ(玄米)の中に
より多く含まれています。
そのフィチンという物質は、酵素の活性を抑えたり、
酸化作用を抑制する作用を持ち、植物体の中では、
主としてリンやカルシウム、マグネシウムなどの
ミネラルと結合し、これらのミネラルを
植物体内に貯蔵する働きを担っているのですが、
人間の体内ではほとんど消化吸収されないという性質があります。
このため、われわれがコメを食べたとき、
コメに含まれているミネラルの多くは
フィチンと結合していますから、
フィチンと一緒に消化吸収されないまま
体外に排出されてしまうことになるのです。
たとえば、玄米には精白米の倍近いカルシウムが含まれていて、
その玄米を食べていながら
しばしばカルシウムの代謝障害が起こるのは、
実は、このフィチンに原因があったからにほかなりません。
つまり、前にも指摘したことがあるように、
その食品に含まれる栄養成分の数値と、
実際に消化吸収できている実効的な数値とは
決して同じでないということで、
コメの場合もミネラルにおいて
そういうことが起こっているというわけです。
そうなると、ことミネラルに関しては、
精白米でも玄米でも、その実効性は同じかといえば、
これもまた決してそうではなく、
玄米の場合にはそれを簡単に解決する方法があるのですが、
それについては次の回に詳しく紹介することにしましょう。
●穀類のフィチン含量 |
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