第104回 (旧暦4月22日)
玄米食の「落とし穴」
今日はまたコメの話を続けることにしましょうか。
先回(第101回・5月19日)では
成人1人当たりの糖類の1日必要量は、
男性で410g、女性で330gとされており、
これをコメのでんぷん量と換算すると、
成人男子の場合には玄米で約570g、
精白米だと約543gに相当することを紹介しました。
この数字だけを見ると、玄米より精白米のほうが
必要量のでんぷんを少量で摂取できるように思えますが、
それは、精白米というのは糖層や胚芽部をすべて取り除いた
「胚乳だけの米」であり、
おなじ重量の玄米と精白米とを比較すると、
糖層や胚芽部を持っている玄米のほうが、
その分だけ「でんぷん量」が少ないことになるからです。
だとすると、必要量の糖類を摂るためには、
やはり玄米より精白米のほうが有利かといえば、
それはまた、そうとばかりは言い切れない別の理由があるのです。
それは、ブドウ糖が身体の中で燃焼する
(エネルギー化する)ためには、
ビタミンB1のたすけを必要とし、でんぷんだけを摂取しても、
ビタミンB1が不足していては
十分なはたらきが得られないからにほかなりません。
つまり、精白米はビタミンB1を含む糖層や
胚芽部を取り除いた「胚乳だけの米」ですから、
精白米を食べるときは、でんぷん量では充足できるとしても、
それを燃焼させるのに必要なビタミンB1を
別の食物で同時に補填しなければならないことになるでしょう。
これに対して玄米は、でんぷん量の摂取では
精白米より多めに摂らなければならないものの、
ビタミンB1を補わなければならない必然が
うんと小さくなってくるわけです。
その意味で、でんぷん源としてのコメを食べるとき、
糖層や胚芽部をつけた玄米のほうが、
それを取り除いてビタミンB1を失くしてしまった精白米よりも
理にかなった食べ方であることは間違いないと言えるでしょう。
ただし、その玄米を食べるときも、
圧力釜を使って炊いたのでは、
高圧によって肝腎のビタミンB1が
半分以上破壊されてしまうことになりますから、
圧力釜を使わずに炊くことを心掛けなければいけません。
このことは、玄米食をしている人たちのあいだでも
意外に知らない人が多く、
玄米食の大きな「落とし穴」になっています。
名称 |
食品中の性質 |
生理作用 |
欠乏症状 |
B1 |
水に溶けやすい、加熱してから水につけておくといっそう溶けやすい 流水ではなお溶けやすくアルカリ(じゅうそうなど)を加えて加熱するとさらに溶けやすいばかりでなく、こわれる 弱酸性で安定 |
体内の貯蔵は少ない、補酵素の成分として炭水化物の代謝にあずかる 脂質は節約作用がある |
脚気、多発性神経炎、便秘、浮腫、心肥大 |
B2 |
光に当てると溶けやすくこわれる アルカリに弱い、酸や熱にはやや安定 水に少し溶ける |
補酵素の成分としてアミノ酸、脂質、炭水化物の代謝に必要、生体酸化水素伝達作用 |
口唇炎、口角炎、角膜炎、羞明、シビガッチャキ症 |
ナイアシン |
熱に強く、参加や光に強い 酸、アルカリに強い、水には少し溶ける |
NAD、NADP(補酵素)の成分として生体酸化の水素伝達作用 |
ベラグラ、口舌炎、胃腸病、皮膚炎、神経症状 |
B6 |
酸性でやや安定 中性、アルカリ性で不安定 光により分解 |
アミノ酸のアミノ基転移、脱炭素反応に補酵素の成分として関与 |
成長がとまる、皮膚炎、貧血、けいれん |
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