蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第103回 (旧暦4月21日)
海辺で生まれた「オジイちゃんの知恵」

これまでに、焼石や草木の葉っぱを調理具として活用したり、
ビールの空き缶でご飯を炊く方法などを紹介してきましたが、
これに類する野外料理の知恵はまだまだたくさんあります。
そして、これらの技(わざ)のほとんどは、
林業や炭焼き、海や川の漁師など、日本の自然のなかで
生業(なりわい)をたててきた人たちのあいだで
代々伝承されてきたものですから、
いってみれば、日本の男たちによって培われてきた
「オジイちゃんの知恵」だとも
呼ぶことができるのではないでしょうか。

そこで今日は、海の漁師たちのあいだで伝えられてきた
貝殻を利用した「オジイちゃんの知恵」を
紹介しておくことにしましょう。
千葉県の房総半島一帯には
「サンガ」と呼ばれる郷土料理がありますが、
これは、もともとはこの地の漁師たちが
即席に浜辺で調理して食べる漁師料理のひとつでした。
漁から戻って浜で焚火を起こし、
その日獲れた魚を叩いて貝殻に盛り、
その貝殻ごと焚火で焼いて食べる、というのがそれで、
貝殻に盛り付けるところから「貝サンガ」とも呼ばれます。
ここではアジを使って作り方を紹介しておきますが、
実際には、ボラでもイカでもイワシでも、
その日に獲れた魚を利用するのが本来の姿です。

〔貝サンガの作り方〕

(1)アジを三枚におろし、皮を引いてから海水で軽く洗い、
「たたき」の要領で粗くたたく。

(2)味噌、ネギ(アサツキでもよい)、
刻みショウガを(1)に加えてさらに叩くが、
こうして叩き合わせたものを「サンガ」と呼ぶ。

(3)このサンガを、アワビやホタテ貝などの
大きめの貝殻に詰めて焚火のきわに置き、
サンガがプツプツと煮えてきたら火から出し、
そのアツアツをつついて食べる。

つまり、熱に強い貝殻を調理具兼食器として
たくみに利用した調理法というわけですが、
まさに海辺ならではの「現地調達料理」と
呼ぶことができるでしょう。
また、このサンガ料理には、貝殻でなく、
サンガを平らな流木の上に盛り、
その上に焚火で焼いた小石を
まんべんなく直接のせて焼く方法もあり、
こちらの方は「貝サンガ」に対して「板サンガ」と呼ばれます。
炭火コンロを利用すれば
家庭でも簡単に楽しむことができますから、
興味のある人はドウゾ。
ご飯のオカズにはもちろんのこと、酒の肴にもケッコウですゾ。

アワビやホタテ貝の殻を利用した貝サンガ

●貝サンガの作り方

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