第752回
チベット医学の診察は? 薬は?
ヒマラヤの秘境・ムスタン王国の国王の侍医であり、
チベット医学の再興を図る、
アムチ・ギャッツオさんの講演集の続きです。
大分前にもチベット医学については
このコラムで紹介しましたが、
チベット医学では、病気をどうやって診るのか?
この部分について、講演から再録してみましょう。
「チベット医学では、
人間には“3つの体質”があるとします。
これはインドのアーユルベーダの概念と共通しています。
●ルン=上昇する性質
●ティパ=熱の性質
●ペーゲン=重くて冷たい性質
この3つのバランスが崩れると
病気になると考えています。」
Q:では、それぞれのバランスが崩れたときは、
どのように診断し、また処方するのか?
A:チベット医学では
見診(特徴は尿診)問診、触診の3つが基本です。
●見診=目、皮膚、舌、尿(色、におい)
●問診=病気の部分、期間など
●触診=脈を診る
【脈診】=体質によって脈の打ち方が分かります。
●ルン=はじめ強く、後で弱く脈を打ちます
●ティパ=縄を撚った時のような脈の打ち方
●ペーゲン=力弱く、ゆるく長く脈打つ
【薬の処方】=以下のような薬を調合します
●ルン=重い性質の薬を与える
●ティパ=涼しく、冷たい性質の薬を与える
●ペーゲン=温かい性質の薬を与える
診断を間違い、
違う処方をすると病気が悪くなる場合もあるので、
医師は感覚を研ぎ澄ましてやる必要があります。
ルンは舌が赤い、乾いている、ざらざらしている、
ティパは白い、黄色く濁っているなど・・・と診るようですが、
相当の経験をつまないと出来ない治療法ですね。
というわけで、参加者からは
興味津々の質問が集中しましたので、
その部分も紹介していきましょう。
Q:西洋医学では、
特許をとった高額な新薬があり、
それは一部の金持ちだけが使えるというような問題があるが、
チベット医学の薬ではどうか?
A:チベット医学の診療、投薬とも、
もともと患者からお金はとらないやり方だった。
近年はチベット医学病院でも
薬を販売するようになっているが、
高額な薬はない。
Q:外科手術はあるか?
A:昔は外科手術があったが、
高名な医師の失敗があってから、
手術は行われなくなった。
現在は焼きゴテ(針)のような治療は行われている。
どうです? 僕たちがなれている
西洋医学とは、とても違った面を
たくさん持っていると思いませんか?
|