元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第648回
ヨーガの技も奇跡ではない

最近、精神神経免疫学の本を読み返しました。
題名は「内なる治癒力」(創元社)です。
この本も、ただの臓器分断や、
体の部品修繕のような治療では限界がある。
ガンは「切る、叩く、焼く」だけの
西洋医学だけでは治らない――
ということに警鐘を鳴らしているとも思えるからです。

精神神経免疫学とは、
あまり聞きなれない言葉でしょうが、
現代西洋医学が軽視している、
人間の心身に在る「自然治癒力」について、
心(精神学)と神経病に加えて、免疫を加えた、
3つの学問領域から、
ホリスティック(心身まるごと)に捉えていこうという医学です。

これまでのホリスティック医学が、
東洋医学なども取り入れていくために、
ともすれば非検証的な面を多くもっていることを指摘し、
瞑想やストレスといった癒しのシステムについても、
より科学的に解明し、
治療に役立てようというのですから、
いまの情報社会に生きるガン患者としては注目すべき、
医学領域だと思います。
心身医学を超える「行動医学」というものだそうですが、
治療の基本は、これまで紹介してきた、
帯津医師や安保教授の
心身全体のシステムを解明し、
ガンなどの治療を「第4の選択肢」から
行おうという新しい治療と同じ方向の研究だと思います。

たとえば、
「片手の皮膚温だけを上げたり、
心拍を速めたり遅くしたりするような
ヨーガ行者の神秘的な技」でさえ、
鼠のラットの脳の「快楽中枢」に電気刺激を与える実験で
解明してしまう――
こうした手法ですから、
「病は気から」といったことが、ともすれば、
霊的現象や占い、カルトの世界と扱われていましたが、
こうした医学の発展で、
患者の納得行く形で論理的に説明されることになります。

自律神経、ホルモン、免疫の三つが
関連しあっているのが、
命の仕組み=自然治癒力だというわけですから、
ただ臓器を切り取るだけでなく、
心の悩み=ストレスを上手に避ければ
克服できそう期待が膨らんできました。

医学の進歩ばかりか、情報社会の進歩もすばらしいですね。
こうした考え方、治療法について
患者が自在に習得できるわけですから、
もう、医療は「医師の独占物」ではないと割り切りましょう。
昔「患者が治し、医師が包帯を巻く」といった名医がいましたが、
そうした本来の命の治療に戻すべき時代が来た
――僕は最近、本気でそう考えて、
スローヘルス研究会
「賢い患者」と「心ある医師」の団欒の場として
広めていきたいと思っているのです。


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