第382回
不良債権急減以外で地道な金融リスク抑制の跡も
中国の不良債権処理について、
急減していること自体、
政策的な措置の賜物であり、
その意味で、銀行の自浄能力によるものではなく、
問題の大きさを考えれば、
政府による大幅な介入も
やむをえないとは思うものの、
それが度を越せば、
後々の大きな問題になると考えます。
2004年3月末時点の、主要商業銀行
(国有商業銀行と株式制商業銀行。
商業銀行全体の場合、
このほかに地方商業銀行と農村商業銀行、
外資銀行も含まれます)
の不良債権残高は2兆776億元、
不良債権比率は16.60%に達していましたが、
これが05年6月末時点では、
それぞれ1兆1637億元、
8.79%にまで低下しています。
特に04年4−6月と05年4−6月に
それぞれ4000−6000億元処理されていることが
特筆もされますし、
これは以前にまでもご紹介しました。
不良債権は、原則的に、
長く持っていれば持っているほど、
被害が拡大するという性質を
備えたものだということを考えれば、
早急な処理は当然のことながら
重要な政治的課題として認識されるのは
当然ではありますが、
それがあまりにも急であれば、
やり方に無理があるのではないかと思わざるを得ず、
将来的に、どうしても不安になります。
一方で、04年と05年の4−6月における
不良債権の急減以外では、
残高自体大きな減少はなく、
3カ月ごとの四半期ごとで見てみると、
むしろ増えることもあるほどです。
ただし、不良債権比率自体は
原則的に着実に減っています。
例えば、04年9月末には、
主要商業銀行の不良債権残高は
1兆6998億元でしたが、
04年12月末では1兆7176億元に増えています。
しかし、不良債権比率自体は
13.37%から13.21%へと低下しています。
これは、不良債権化しない、問題のない、
いわゆる「正常類」「注目類」の貸付が
増えたことによるものだと考えられます
(中国では金融機関による貸付を問題のない順で、
「正常類」「注目類」「低劣類」「疑い類」「損失類」
という5段階で等級付けしています。
中国で不良債権といった場合、
下位三つの「低劣類」「疑い類」「損失類」に含まれる
債権を指します)。
これは目立たないものの、
地道なリスクコントロールが
金融機関側で行われたことを
示すものとも考えられなくもありません。
確かに爆弾を抱えていることには変わりありません。
ただ、不良債権を巡る、
中国の金融改革の実態は
もう少し見極めたほうが良いかもしれません。
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