第381回
巨額の不良債権処理には時には大鉈も必要だが・・・
2005年6月末時点の
商業銀行全体の不良債権比率が
年初より4.14ポイント低い8.71%となり、
残高は1兆2759億元(約18兆円弱で)。
これは05年3月末時点と比べて
実に30%以上も減少した数値となっています。
これが、工商銀行の総額6900億元ともいわれた
不良債権の約3分の1に相当する程度のものが、
政策的な措置によって
処理されたことが大きなようであることは
前回までにお話しました。
また、こうした動きは、
中国建設銀行と中国銀行による
04年4−6月の動きとも
非常に似通っていることは前回指摘しました。
しかし、中国金融当局は、
不良債権処理を加速していることを、
政治的な手段を用いていることも踏まえて、
喧伝しています。
まさに「中国金融改革の成果」であると
いわんばかりです。
これだけ多額の不良債権を
いつまでも抱えているわけにはいかないので、
時には政治的な介入も必要と思われますが、
これが、国有四大銀行を上場させたいがための
無計画な政治的な処理であるのならば、
むしろ四大銀行上場後に
大きな混乱をもたらす爆弾になりかねません。
現在の中国の金融改革を見ていると、
不良債権処理そのものが課題というよりは、
四大銀行上場それ自体が課題となってきており、
不良債権処理はその手段に成り下がって、
本末転倒している感さえもあります。
社会的、経済的、政治的な課題に対して、
大鉈を振ることのできる体制であることは、
中国のように発展途上国には絶対的に必要で、
私個人としては、そうした意味で、
共産党体制というのは、
いろいろな問題を抱えながらも、
かなり効率的に機能していると評価しています。
むしろ、共産党体制の安泰こそが、
中国経済の今後数年から
十数年にかけての急成長を
保障するものと考えています。
不良債権処理に際しても、
日本ではちょっと考えられないような、
ある意味で乱暴と思える手法が用いられること自体、
問題解決に向けた大きな一歩かもしれません。
ただし、それが目的を見失い、慢性化してしまえば、
将来的に大きな禍となって
降りかかってくる可能性も否めません。
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