日本人は消費者無視の政策に鈍感である
官僚の生産者重視の経済政策が消費者を犠牲にしている
日本人が世界一高い労賃をもらい、世界一金持ちになったにもかかわらず、金持ちになったという実感を持たないのは、どこかにボタンのかけ違いがあるというよりほかない。間違いの原因は、アメリカ人がしばしば指摘しているように、日本の流通機構の硬直性にもその一半の責任があるように思うが、より多く日本の官僚の生産者重視、消費者無視の経済政策に帰することができる。
資本も資源もない国が、一国を豊かにしようと思えば、生産の増大を最優先にするよりほかなかった。まだ資本の蓄積が充分でなかったころ、大蔵省は銀行融資に優先順位をつけ、銀行が不動産投資や第三次産業に融資することを禁じた。通産省は、外国企業が日本に進出することに対しほとんど禁止的な制約を設け、アメリカの自動車会社やスーパーマーケットが日本で工場を設けたり、チェーン店を展開することができないように仕向けた。また農産物については、日本側が攻め込まれる立場にあったので、農水省が先頭に立って輸入を全面的に禁止したり、数量の制限をしたり、価格調節機関を設けて、安い輸入農産物が国産品の価格に影響を及ぼさないように防波堤の役割を果たさせた。こうした過保護のおかげで、気がついてみたら、お米の価格は世界価格の十倍にも達したし、そのために莫大な国家予算を食うようになってしまっていた。
また運輸省は、国営の航空事業を育てるために、東京発の国際交通運賃を、アメリカや香港で発行される運賃の倍以上に維持し、そのために海外で切符を買う人が増えた。そうした輸入切符に対して日本航空が搭乗拒否をしたために、企業努力が足りないと経済団体からきついお叱りをうけた。すると運輸省のお役人さんがしゃしゃり出て、日本発の航空運賃を一割あまり引き下げる交換条件として、すべての東京経由の外国発の切符の運賃を引き上げるようアメリカや香港や韓国に働きかけるようになった。
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