日本人が外国で安い切符を手に入れることを防ぐために、東京を二回経由する切符の代金を以前に比べて50%以上も値上げさせたのである。日本の旅行者が外国で安い切符を買えないようにするのが目的であり、そのもくろみは、一応、成功したかもしれないが、航空運賃を値上げすることについては、当事国が音頭をとれば、どこの国の航空会社だって反対はしない。その代り日本へ寄るとよけいにお金を払わされるので、外国人の旅行者は東京に立ち寄ることを敬遠するようになった。自国の業者を護るために、自国の消費者ばかりでなく、外国人の消費者まで犠牲にするお役人は、おそらく世界中、他に類例をみないのではあるまいか。
国が貧しくて、何が何でも生産を奨励したり、劣勢にある企業を育成したりしなければならなかったあいだは、日本の官僚のこうした徹底した保護政策はきわめて有効であった。悪名高き MITI(通産省)は産業界の教育ママとして広く世界に知られているが、それはたまたまMITIが外国人の対日交渉の窓口になっていたからであって、この傾向は日本のすべての役所に共通したものである。こうした徹底した保護政策によって日本の経済が発展したことも事実であるが、日本が世界のトップに立つようになると、今までのような保護主義では世界に通用しなくなってしまった。今後も今と同じ態度をとり続けると、「日本人はアンフェアな国民だ」とますます世界中から非難されることは避けられないが、淵源を辿ると、日本人がアンフェアなのでなくて、教育ママの立場にあるお役人が昔ながらの立場に固執して、頭の切りかえができずにいるというところまで辿りついてしまう。

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