ただし、そのためには、日本人がアメリカでアメリカ人の労働者を使いこなせることが大前提である。また日本の企業は親会社、子会社、下請け会社とピラミッド型にできているので、下請け会社群を引き連れてアメリカ入りをしなければならない。
これらの下請け会社の経営者たちが、アメリカでアメリカ人の労働者を使いこなして製品をつくれるようにならなければならない。もちろん、言語上の障害もあるし、風俗習慣や気質の違いからくるトラブルも予想されるし、必ずしも容易なことではないが、「必要は発明の母」というように、英語もロクにできない中小企業のオヤジさんたちが親会社の誘いに応じて、アトランタやオハイオまでとんでいって工場をつくることが実際にも起らざるを得ない。
そうした先進国への工場移転を可能にした原因はいくつか考えられるが、その中で最も重要なことは、日本の労働力の生産性がアメリカのそれをこえるようになったことであろう。
日本の労賃が(円高による分も含めて)アメリカのそれをこえても成り立つようになったのは、オートメ化と省エネに原因がある。こうした生産技術に取り組んだおかげで、アメリカやヨーロッパに行って、それぞれの国の労働者に、それぞれの国の水準に準じた労賃を支払っても、日本で生産するより安いコストで物をつくることができるようになったのである。すでに開発しつくされたと考えられている先進国の労働資源を再開発する可能性をつくり出したのは、生産のオートメ化を日本人が自国で開発し、世界で最高の労働先進国になったからにほかならない。

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