アメリカはもともと金持ちの国だから、アメリカ人の好みそうなものをつくって売り込めばそれで問に合ってきた。しかし、アメリカ人がお金を使いすぎて払うお金に困るようになると、アメリカ人がお金を払えるように、アメリカ国内で生産し、アメリカ人にお金を払えるようなチャンスをあたえることが必要になる。海外から自動車を売り込んで、アメリカの自動車メーカーにレイ・オフを強いるより、アメリカ国内で生産をすれば、外貨を使わせないですむばかりでなく、アメリカの自動車メーカーがレイ・オフした人問を日本企業がそっくり引き受けることになるから、摩擦の原因に大半が解決されることになる。
さしあたり工場を移す先としてアメリカが選ばれるのは、無いところから出発するのと違って、アメリカのライバル企業に勝ち抜けばよいだけだし、そういう面ではすでに実績もある。また市場が大きく購買力が強いから、成功できれば稼ぎの高も大変なものになるというメリットもある。
しかし、工場の発展が新しい富をつくり出し、その恩恵を地元にもたらすという点では、
日本国内だろうと、アメリカだろうと、あるいは、もっとずっと所得の低い発展途上国だろうと、基本的には、何の変りもない。新しくもたらされた富によって潤うのはもちろん、アメリカやヨーロッパよりは、もっとずっと所得水準の低い国のほうがはるかに効果的である。低所得の国ほど工業化に成功すれば、国が急速に豊かになる。台湾や韓国をみれば、そのことがよく理解できる。台湾や韓国は、いずれもかつて日本の植民地だった時代があり、お互いに愉快な思い出ばかりではないが、日本が遺した電力や道路、港湾や教育制度などのいわゆるインフラは基本的に日本に近いものであった。だから日本人が去ったあと、後を継いだそれぞれの国の人々は、経済の復興期に入ると日本企業と合弁事業をおこしたり、技術合作をしたりして、世界中の他の国々の人々に比して早くから日本人と同じ工業化の道を歩むようになった。その結果、台湾と韓国はいち早くNIEs のチャンピオンとなり、アメリカに対する貿易黒字国となり、日本と同じようにアメリカ政府からきつい貿易自由化と通貨の切り上げを迫られるようになっている。
これらの国々で元高、ウォン高で採算の合わなくなった企業は、今や日本企業と同じように本国をあとに海外引っ越しを始めている。日本企業の多くはアメリカ市場に狙いを定めてアメリカに進出しているが、台湾、韓国の輸出産業は労働集約的なものが多いために、直接、労賃の高いアメリカに乗り込むこともできず、タイ、フィリピン、中国大陸などの発展途上国へと大移動を始めている。ということは、次の段階で東南アジア、中国の地域は、日本によって工業化が推進される分野がないとはいえないが、日本の一番弟子である NIEsのチャンピオンによって推進される方向にあるといってよいだろう。
どの国が先頭に立ってやるにしろ、工場の大移動はそれぞれの地域に富のつくり方を教え、それらの地域の住民を豊かにすることは問違いない。でなければ、今どき外国企業の進出がよその国で歓呼の声で迎えられるわけもないのである。

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