とはいっても、黄金に親しんできた歴史はあまりに長く、かつそれぞれの国の紙幣だけでは、国際貿易の支払い手段としては不充分だったので、それに代る国際的な支払い手段を見つけ出す必要があった。
大恐慌のあと、世界経済で最も大きなウエイトを占めるようになったのはアメリカであり、アメリカのドルは黄金との兌換を約束していたので、とりあえずアメリカのドルを国際通貨として使用する習慣が次第にできてきた。すなわち世界で一番強い通貨であるドルが世界通貨となり、ドルの兌換性を通じて、黄金と連結するという曖昧な間接金本位制を採用することによって世界中がお茶を濁すようになったのである。
金本位制に代って登場したドル本位制は、ドルの購買力を唯一の拠り所とした通貨制度であり、ドルが強いあいだはドルの信用でその購買力を維持できたが、ドルを支えるアメリカ経済力に変化が起れば、一片の反古に化するかもしれない頼りのない約束事にすぎない。金貨を通貨とした時代でさえも、国は時折財政困難におちいり、金貨の改鋳をしなければ、破産を免れることができなかった。それが紙本位制になればなおさらのことで、絶え間のない貨幣の増発と、インフレによってしか、体制を維持していけないことは明らかである。
第二次大戦によって世界経済の中心地ははっきりとアメリカに移ったので、イギリスやフランスなどの先進国はもとよりのこと、西ドイツ、イタリア、日本のような敗戦国の通貨もドルを裏づけとするようになった。ドル自体にもインフレがなければ体制の維持ができないという体質があるが、全世界がドルを裏づけに自国通貨を発行するとすれば、ドルのインフレ体質を受け継ぐだけでなく、自国の経済体質からくるインフレ要因がこれに加わることになる。
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