第639回
客が少なくて寂しすぎる、シズイエム サンス 1
オエノングループ(元合同酒精)の経営、
銅版画家の山本容子氏プロデュースのフレンチ。
一昨年でしたか、雑誌などで華々しく紹介され登場しましたが、
1年経たずして
まったく話題に上らない店になってしまったようです。
なぜに、フレンチに銅版画家のアドヴァイスが必要なのでしょうか。
メニューにあれこれ指示を出せるものでもなく、
ましてや調理そのものにアドヴァイスできるはずがありません。
せいぜい、インテリアや器といった物に対して
意見をいうことになるのでしょうが、
肝心の料理や価格設定を二の次にして、
女性銅版画家の関与を一番のウリにしてしまったコンセプト、
現在の不人気はオエノンの戦略ミスと考えます。
銀座のコリドー通りに面した、
周囲から浮き上がったカフェのような外観。
この立地もミステークでしょう。
コリドー街といえば、
スタンドバーや居酒屋、廉価な鮨屋が相場の
庶民的な店が多い場所です。
近所に居酒屋やタネの大きさだけがウリの
「美登利鮨」の行列を見ながら、
急に「今日は豪華なフレンチへ」と
人はそう簡単にスイッチが切り替わりません。
せいぜい、この近辺は
「カウンターフレンチ」止まりの地域と考える次第です。
正式店名「ル シズィエム サンス」、
日本語で「第六感」と訳するそうです。
五感を超えたものを
この店で感じ取る事が果たしてできるでしょうか。
少なくとも、この通りを歩いて店にやってきた客には
難しいと考えます。
外からは朱のカバーがかかった椅子がある
併設されたカフェやバーが見えますが、
このレストランホールは更に落ち着きません。
イミテーションと直ぐわかる暖炉があり、
壁にはワインの瓶底や檜の丸太の断面を埋め込んでいます。
なぜこんな壁にしてしまうのか、
瓶底や檜の丸太の必要性をまったく感じません。
ホール中央に12席の相席テーブル。当然ランチョンマット式です。
なぜに高額フレンチに詰め込みを目的とした
相席テーブルを用意するのか、不思議です。
そして周囲にクロスをかけた5卓のテーブルが配置されています。
思ったより大箱ではありません。
片言の日本語を話す外人女性スタッフがいましたが、
彼女の必然性にも疑問。
そうなんです、内装やテーブル、そして外人スタッフと
その必然性をまったく感じない疑問が入店直後から沸いてきます。
この沸いてくる「疑問」が
いわゆる「第六感」だというのであれば、シャレにもなりません。
<明日に続く>
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