自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第640回
客が少なくて寂しすぎる、シズイエム サンス 2

ワインの品揃えは不思議です。
自社扱いなのか、
アヤラやジャック セロスというシャンパーニュが
安めに設定されている割に、
沈没船から引き上げた20世紀始めのノンヴィンものが126万円。
確かオークションで当初出された落札価格は
40万円程度だったと記憶しています。
こんあなもの頼む人はいないでしょう。
ざっと見て、白ワインは4千円から67万円まで、
赤は8300円から100万円まであります。
自社扱いの造り手なのか、
2〜3のドメーヌのワインがかなりの部分を占めていましたが、
その他は人気、カリスマ造り手のワインが2〜3倍の値付けであり、
100万円のロマネ・コンティまで数ヴィンテージありました。
客がほとんど入っていない、こんなド派手なフレンチで、
こんな高額なワインを飲む人がいるのでしょうか。
種類は多いですが、一般客には選択肢の少ない、
いわゆるノーセンスなワインリストであります。

料理は1万2千円、1万4千円、1万8千円のコースが主体。
その他予約が必要なお任せコースや
若干のアラカルトもあるようです。
1万2千円のコースをベースに、
高額コースは料理が増えていくだけです。
カトラリーはクリストフルなのですが、
器やグラスは山本氏の趣味を反映したのか奇抜で使いにくいもの。
ビールグラス、有塩、無塩の2種のバター皿、そしてパン皿なども
シンプルではなく、
客には使い勝手の悪い、自己主張の強いデザインとなっております。

肝心の料理ですが、
フォアグラ、秋トリュフのスープ、鰆とホタテの挟みソテー、
薫香のついた鴨など独創性に欠けるものの悪くはありません。
どちらかというと美味しいレベル。
火入れなど基本的な技量も問題ありませんが、
この価格なら当たり前でしょうか。

サービス料はなく、総計はメニューの価格の加算だけ。
頼むワインにもよりますが、一人3万円前後で終わるでしょう。
しかしバーからは人声が聞こえてくるものの、
ホールの客は我々だけ。内装や食器が奇抜で使いにくく、
ワインや料理に選択肢がなく、この寂しいホールですから、
料理が多少良くてもリピートする気になれませんでした。

<結論>
大手のオエノングループ経営だから破綻はしないだろうが、
集客は寂しい限り。
なぜフレンチに銅版画家なのか、
奇抜なデザインで集客をはかるのは時代遅れと考えます。
ニューオータニ東京の「トゥール ダルジャン」元シェフ、
現大阪の「サクラ」シェフであるコルビ氏が料理顧問と聞きました。
折角の料理が奇抜な店内と器に邪魔されているのは残念です。


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2005年5月11日(水)

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