| 第517回ワインの諸々 その43
 値付けの安いワインに釣られて支払額が高くなった
 
 ここ最近、ワインが安く設定されている店に何件か遭遇しております。
 和食では「龍吟」、
 そしてフレンチでは何といっても酒店名ではありませんが
 カクヤスの「レトワール」。
 絶対額は高くても、小売値とたいして変わらない、もしくは市場価格より安いかもしれないといったワインがあれば、
 絶対額が多少高くても飲んでしまうのが
 ワイン好きではないでしょうか。
 つまり、自分もそうですが、
 ワイン好き、ワインラヴァー、ワインオタクは、
 いつでも機会があれば
 「おいしい」、「レア」、「有名」、「高額」、「評価が高い」
 ワインを飲みたがっていると思います。
 私がまだワインに興味を持ち始めた初心者のころ、
 先輩格の人から
 「ワインは高ければ高いほどおいしいものだ」と習いました。
 誤解を避ける意味で補足させていただくと、
 同じ飲食店、同じ酒屋では仕入れに対する掛け率は同じと考えて、
 仕入れが高いものほどおいしいと言うことだと思います。
 ボルドーなら格付けが上、例えば2級より1級格付け、ブルゴーニュなら1級より特級畑、
 無名より有名造り手の方が
 ワインの価格は高くそしておいしいものになります。
 例外はあり、中には安くてもおいしいワインもありますが、
 しかし世界で認知されてくると高くなってしまいます。
 ですから、おいしいワイン=高いワインという方程式が頭の中にあるわけです。
 そのような考えをしている人が、
 店で安い値付けの
 「おいしいワイン」を見つけたらどうなるでしょうか。
 飲む機会を狙っているワイン好きは見逃さないでしょう。
 同じものではなく、違ったワインを色々経験して
 キャリアを上げたいと思っている人も少なくありません。
 かくして、レトワールなど料理だけでは1万円前後の店でも、総計では一人3万円を軽く超えてしまう客も出てくるわけです。
 反面、最近ではあまりに高すぎた値付けの「ベージュ」。
 料理が2万円を超えたグランメゾンでも、
 バカ高い掛け率では最低限のワインで結構、といった人も多く、
 結果はレトワールなど料理が半値の店と
 たいして支払いが変わらなくなる場合があるのです。
 物は考えよう。ワインを高く値付けて、
 1本売れれば2倍、3倍儲かると考えても、売れなければパー、
 利益はゼロです。
 逆に薄利でも仕入れより売値が高ければ、
 利益は出るわけでして固定費の回収に役立つのです。
 特に「ベージュ」などグランメゾン系へ行く人は
 余裕のある人も多いはず。
 そこそこ割安感を持たせたワインリストにしたならば、
 絶対額が4万、5万のワインでも
 平気で頼む客は増えると考えます。
 安いワインを本当に安く提供しても、
 ワインラヴァーやオタクは注文しませんから、
 そこのところはお間違いなく。
 あくまで、レア、高級とされているワインの値付けに関してです。
 最近の訪問で、立地、店構え、スタッフ数、料理価格、など投資額が桁違いの「ベージュ」と
 「レトワール」の
 一人当たりの支払額が大して変わらなかったという事実、
 ワイン好きの心理など
 飲食店関係者にもよく考えてもらいたい点であります。
 誠に勝手ながら、コラムを2週間お休みさせていただきます。元旦には1度更新してご挨拶をさせていただきますが、
 新年の再開は1月10日を予定しております。
 この1年、このコラムにお付き合いいただきまして有難うございました。
 厚く御礼申し上げます。
 皆様にはよいお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます。
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