自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第503回
ワインの諸々 その41
グランメゾンより高い値付けでやっていける不思議

料理や店構えがたいしたことない店なのに、
ワインの値付けが恐ろしく高い店が未だに存在しています。
グランメゾンと言われる豪華な建屋、
すばらしいサービスの中、
最高級の食材を使った手のこんだ料理を食べながらならば、
ワインが少々値付けが高かろうが友里も文句を言いません。
それだけの価値があると客が判断すればいいのです。
しかし、そうでない店が
かなりの掛け率でワインを出しているのに、
淘汰されずに存在している不思議な現象をよくみます。

一つはちょっと小洒落たダイニングの雰囲気だけの店です。
例えを挙げれば、このコラムの常連になった
「よねむら」などがすぐに思い浮かびます。
もう一つは、かなりレアなワインではありますが、
世間相場やオークション相場をかなり上回った、
どちらかというと店言いなり、
ふっかけにちかい価格で客に出している店です。
なぜだか西麻布近辺に固まっているようですが、
T店などが昔から有名です。

前者はたいしたワインを用意しておりません。
普通のワインをただ高く出しているだけの店。
おそらく、主人もワインにはあまり拘りを持っていない、
あまりワインを飲まない人ではないかと推測しますが、
ある程度客が押し寄せていると言うことは、
私が力説するほどワインに拘らない、
そして支払額に拘らない客が多いと言うことでしょうか。
ワインがよくわからない人ならば、
リストを見る気力もなく、ただ店お勧め、
もしくは価格的に真ん中あたりのワインを
無造作に頼んで満足してしまっているのでしょう。
ワインの知識に明るくない客がいる限り、
創作系の見た目だけの料理で釣れれば、
こういう店は一部で存在できると言うことです。

後者は、はっきりいって経費族か、
ネットバブル紳士を相手にしていると思います。
数人なのに支払いが何十万にもなったという話をよく聞きます。
しかし、これらの店の主人を、
ちょっとしたワイン好きなら参加できるオークションで
一緒にパドルを挙げて競争しているのをよく見かけます。
彼らはどんどん落札価格を挙げてしまう元凶なのですが、
それは買い手が必ずいるとの確信があるからでしょう。
つまり、仕入れのルートは普通のワイン好きと同じ場合があり、
それに店の経費や適正な利益ではなく、
そんなオークションから購入しているとは知らない、
聞きかじっただけの知識しかない、
文句を言わない富裕層に
かなりの利益を上乗せして売ってしまうのです。
このような仕入れルートやオークション相場を知っている人は、
決して足を踏み入れない店なのですが、
未だに存在していて、オークションを荒らしているのですから、
お金に糸目をつけない客がまだまだいるということでしょう。

世の中には、極めることはもとより、
まったく知識の習得をしないで、
ただ高い支払いをして
趣味や収集に満足される方がいらっしゃりますから、
このような商売が成り立っているだと考えます。


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2004年12月12日(日)

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