第472回
友里征耶のタブーに挑戦 その22
東京の客は軽んじられていないか
大阪や京都の人気店がここ最近、
こぞって銀座に乗り出してきました。
新しいところでは、交詢ビルの4階フロアの「六覺燈」、
「よねむら」、「八た」。
ここ数年では「クロ ド ミャン」もあります。
雑誌の記事に出ていましたが、
「よねむら」の主人は
銀座に店を出すのが夢だったと言っています。
このコラムを書いている時点で、
「八た」には訪れていませんが、
他の店へ何回か訪問した感想を述べさせていただくと、
わざわざ箱根の山を越えて銀座に出てきていただくほど
東京人にとってあり難い店なのだろうかと。
「クロ ド ミャン」は
それなりに東京人の頭にある「大阪チック」なコンセプト。
犬養女史が言われているような、
フレンチ部門でグランプリとはまったく思いませんが、
それなりに最初の頃は面白く、
個性的で安めのところはいいと思います。
しかし後にコラムで個別に書きますが、例えば「六覺燈」。
噂ではすごい串揚げとのことでしたが、
小さめなネタが特徴で、「串の坊」よりは洗練されていますが、
コロッケにする、詰め物を挟む、
トンブリをつける、チーズを入れる、
といった普通のフレンチのアミューズに出てくるような
変わり映えしないものです。
油の匂いのしない清潔感はありますが、
総量も少なくこれでフレンチの高額店並の10500円とは。
同じフロアの他の店より客が入っていますが、
聞けば出張で大阪へ行った際に本店へ通っていた客が主体だとか。
東京にでてきたから、便利とばかり訪問しているようですが、
本店は7千円チョイのはずで、
要は出張族相手の店で
新しい東京の客を獲得するのが今後の課題でしょう。
「よねむら」もこれは単なる街場の洋食屋が勘違いして
フレンチもどきの創作料理を造りだしただけと判断。
質の悪い高級食材などをつかって、
いわゆる「Hanako」読者のような
ミーハー客を惑わす戦略です。
食材の質、食材の取り合わせ、技術がどれも中途半端で
しかし夜は1万4千円。
京都は1万円くらいですけど、それでも高すぎる。
どうしてこのような内容の料理に人気が出るのか。
京都のフレンチの水準を疑ってしまいます。
また、京都や大阪の和食も
東京人を狙い撃ちしていると思われる事があります。
京都「千花」のコースは1万5千円くらいから3万円くらいまで。
相手をみて、例えば東京の人向けには、
内容がほとんど変わらなくても
3万円近くのコースを勧めてきます。
大阪「本湖月」は、元来1万5千円コースのみと聞きました。
東京人向けに、内容はさして変わらないものを
2万、2万5千円コースをあらたに設定したと聞いています。
なんと東京人を舐めた営業姿勢のことか。
つまり、和食に限らず、
元来関西不毛であるといわれる
フレンチ、イタリアンに類似した似非フレンチに至るまで、
ずいぶん東京の客は
舐められているのではないかと私は思うのです。
ただの軽いフレンチのアミューズにも見られる串カツならば、
いくらマスコミが絶賛していても、
変なワインの売り方でも
「駄目なものは駄目、普通なら普通」
訳のわからない似非フレンチでも
「旨くないものは旨くない」
とはっきりした態度をとらなければ、
この先どんどん勘違いした料理人が
上京してくるのではないでしょうか。
東京の外食初心者がますます舐められ続けられると考えます。
それだけ東京の客は、
次から次へと発刊される雑誌や
フード・レストランジャーナリストのヨイショ記事に
侵される機会が多いからでしょうが、
そろそろはっきりした態度、評価をする必要があると考えます。
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