自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第448回
意外に安かった、次郎 よこはま店

本店の「すきやばし 次郎」より上だという評判も
ネットや噂で聞かれる暖簾分け店。
二郎さんより技量もあるという話も聞いた事があります。
師匠に似て気難しいのでしょうか、
電話をかけた際、女将さんはご主人の承諾をいちいちとってから、
予約を受け付けておりました。
怖いイメージが先入観として叩き込まれます。

関内駅からは結構距離があります。
小さなカウンター席が6席、
そしてカウンターを延長したような、
相対して座れる6人掛けはグループ専用でしょうか。
貧弱でおまけにしか見えない、
2人用のテーブルは使用していないでしょう。
白木ではなく、朱のカウンターはいかがなものか。
角の塗りがかなりはげていて、見た目がよくありません。

当然価格レベルを確認できるわけではなく、
ツマミを入れたお任せスタイルでスタート。
本店と同じく、ツマミのタネは握りと重なりますから、
ビールやお酒をそこそこ飲み終えたら、
握りに切り替えた方がいいでしょう。
私は二郎さんの握りに当たった事がありませんが、
この水谷氏の握りは全体に小ぶりですが、
二郎さんの長男さんより柔らかいもの。
ふっくらした感じといえるかもしれません。

タネはいずれも平均以上、
されどすべて最高物とはいえませんが、それは本店も同じ。
白身は〆ておらず、私には江戸前と考えると物足りません。
海老は同じく大振りなものでしたが、
本店ほど旨みを感じなかったのは残念。
しかし、コハダの〆具合、煮穴子、干瓢と
この暖簾分け店のほうが私は満足を覚えました。
鮪はもはやあるレベル以上の鮨屋では
遜色つけられなくなっているのではないでしょうか。
高額鮨屋はシンジケートを組むがごとく、
藤田水産という同じ卸から仕入れているのが流行です。
仕入れる日によって、個体差、部位が異なるでしょうが、
平均すればレベルはみな同じと考えます。

お酒も加茂鶴一本やり。
本店のスタイルはすべてにきっちり継承されています。
本店ほど早く出て行けというプレッシャーは感じないまでも、
あのスピードで握り続けられたら、
1時間以上居座る財力、胃袋、度胸を持ち合わせた人は
少ないと考えます。
矢継ぎ早に握りを口に運んで入店してから1時間。
驚きはお会計でした。
連れがほとんどお酒を飲まない人でしたが、
その分を私がカバーして、しかし二人で4万円を切りました。
2貫ほど追加しての値段ですから、
ヘタしたら、本店の半値近い安めの値段。
いくら地代が違うからといって、
その差は一人数千円で収まるはず。
タネや握りを食べ比べて、両店に明確な差を感じないので、
本店の値付けにおおいに疑問が残りました。

<結論>
総合力では六本木「兼定」に及ばないと考えますが、
同じく2万円前後で終了するレベルの高い高額鮨屋。
本店に行くくらいならば、都内からタクシーで往復しても
二人以上なら安く上がる計算になります。


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2004年10月18日(月)

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