第449回
友里征耶のタブーに挑戦 その19
どちらが優れているのか、手打と乾麺
夏前のころ、「オチアイ」や「うち山」の辺りを歩いていたら、
行列ができている小さなイタリアンを発見しました。
その店名は「山岸食堂」。
13時を過ぎる頃は、既にクローズの看板が出てしまうほどで、
ラーメン屋からそのまま居抜きで店換したような内装の店で
不思議に感じたのです。
ネットで検索すると絶賛の嵐。
当然友里としては気になる存在となりまして、
夏の終わりから何回か訪問しました。
幅広と細目と言う麺はすべて手打とのこと。
細目でもかなり太いと感じる麺ですが、
パスタのベースは3種のみ。
造り置きのトマトソースを使って具を替えたものが10種類ほど。
市販のテトラパックの生クリームを使った
クリームソースベースのパスタも10種ほどに、
オイル・塩味ベースがいくつかありました。
麺を茹でるのに時間はかかりますが、
ベースはトマトかクリームでその場で簡単に仕上げる、
しかもパスタもだいぶ茹ですぎのもの。
850円という価格は、
このラーメン屋と変わらない内装、パンと小さなサラダ、
そして薄いコーヒーがついたとしても
そんなに魅力的には感じません。
勿論、パスタ自身に出色なものを感じません。
ではなぜ、こんなに何の変哲もない調理で人気があるのか。
考えた末に私は、
「手打麺のみ」を全面に押し出している営業姿勢だからだ
という結論にたどりつきました。
巷ではどうやら「乾麺」より「手打」の方が旨い、
ということになっているように感じます。
つまり、手打ち麺だけをランチでも出してくれる、
ということだけで人気になっているとしか思えないのです。
雑誌などで、蕎麦屋を含めて
「手打麺」を煽って宣伝していますから、
「手打神話」が出来上がってしまうようですが、
私は乾麺には乾麺の旨さ、にじみ出る味わいがあり、
下手な手打を下手に茹でるよりはずっと旨いと思っております。
確かにラグーなど濃厚なソースには
絡まりやすい幅広な手打麺があっているかもしれません。
しかし、スパゲッティなど乾麺には乾麺の良さがあると思います。
要はケースバイケースです。
マスコミなどが
何でもかんでも「手打」一番と煽る傾向がありますが、
蕎麦でも手打でもおいしくない店がかなりあります。
山岸食堂もあのせまいカウンター内とあの設備では
制約があるとは思いますが、
手打というだけの普通の味のパスタ屋、
決して傑出したパスタを提供しているところではありません。
あそこで乾麺だけを出していたら、
これほどの人気にならなかったでしょう。
一日30名(昼)限定と銘打っているのも効果があるようです。
明日から2回、
これをいうと私のセンスを疑われるかと躊躇しましたが、
誰でも一般に絶賛する食材でも
実は違うのではないかというテーマ、
「新そばと旧そば」、「天然物と養殖もの」について
触れてみたいと思います。
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