第426回
ワインの諸々 その31
ロゼにうまいものなし
私がフレンチなどの洋物に通いだした時期は、
今ほどワインが一般に普及されていませんでした。
詳しいワイン本など見当たらなかったのですが、
その頃の一般のワインに対する知識としては、
魚には白ワイン、肉には赤ワイン、という
まったく初歩的なものだけでした。
当時は、シャンパーニュが普及されておらず、
食前酒にはドライシェリーを迷わず頼んだ記憶もあります。
現在はあまり
この堅苦しい法則にこだわる人はいなくなりましたが、
当時は日本だけではなくイギリスでも絶対的だったようです。
確か、ジェームスボンドの「ロシアより愛をこめて」でも、
ボンドはロシアのスパイが魚料理に赤ワインを合わせたのをみて、
正体を見切ったシーンがあったと記憶しています。
それでは当時まったくの素人であった私たちが、
魚料理と肉料理の両方を食べる場合、
白、赤2本飲めなければどう言われていたか。
その答えは「ロゼ」を頼め。
真に受けてロゼを飲んだ事もありましたが、
私がワインを勉強しだしたとき、
同じくワイン仲間から教えられた格言がこの
「ロゼにうまいものなし」でした。
ロゼは発泡酒やスティルワインで時々見かけるものです。
シャンパーニュでは、赤、白のワインを混ぜた手抜きタイプ、
スキンコンタクトで完全な赤になる前に色付けを止めた
手間のかかるタイプ、と2種ありますが、
いずれも値段は同じメーカー、グレードなら
ロゼの方が高くなっています。
しかし、その割にうまいロゼシャンパーニュというものは
少ないのではないでしょうか。
ワイン収集家で、ロゼを集めている方は
ほとんどいないと思います。
タヴェルという
ロゼで有名なスティルワインがフランスにはあるのですが、
ややしっかりしているとはいえ、好んで頼む人は少ない。
「ロゼにうまいものなし」が私の先入観にあって、
クリスタルやドン ペリニヨンなど
プレステージもののロゼシャンパーニュを飲んだ機会は多けれど、
唯一、82年のドンペリ以外、
感じ入ったものには出会っておりません。
私見でいわせていただくと、ロゼワインの有効な利用法は2つ。
1つは実際TV局知人から聞いたのですが、
ドラマで赤ワインを飲むシチュエーションで、
替わりにロゼをグラスに注ぐということ。
ロゼの方が綺麗な赤が画面で再現できるということです。
そして、もう一つは、真夏の避暑地の屋外で、
キンキンに冷やして飲む場合に限られると考えます。
キンキンに冷やすと、味わいの深さを感じませんから、
うまくてもうまくなくても、相違が見出せないからです。
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