第320回
友里征耶の疑問 その12
魚は天然物、でもなぜ肉は手塩にかけた養殖がいいのか
最近はデパ地下の売り場でも、
「天然・・・」と銘打った刺身が置かれています。
当然、養殖物とちがって単価は高くなっています。
高額店でもわざわざ「うちは養殖物を出している」とは
言う店はないでしょう。
疑惑をもつものには数多く遭遇しますけど、
魚の分野では、養殖=食材レベルは下、
という構図になっているようです。
高額有名鮨店はとくに「天然物」をウリにしています。
鮪にしてもシマアジなど色物にしても
ヒラメやカレイなど白身にしても天然第一主義のはず。
養殖物はせいぜい貝類程度と推測します。
また生ではありませんが、
鰻にしても山本益博氏をはじめ
「天然」を重宝している発言をよく聞きます。
天然物は餌やその過酷な自然界での成長で、
締まった身からの食感、不必要な脂がない
自然の「旨み」や「香り」があるということでしょう。
確かにそう端から言い含められると、
魚類は天然物がうまいと感じてしまいます。
確かに養殖とは違った風味に食感。
ではなんでも天然物がよいかというと
同じ生き物でも評価はまったく違います。
その筆頭は牛ですね。
松坂、三田、近江だなんだとブランド牛が持て囃されていますが、
これははっきりいうと養殖です。
しかも鰻のように稚魚をもってきて放流するのではなく、
繁殖の段階から人間が介入している完全養殖。
最近のブランドポークもそのようです。
餌を考え、人の手をかなりかけた結果、
高価なブランド牛が誕生するようですが、
なぜ、肉類は自然放牧もしくは野生の牛ではなく
養殖の牛が好まれるのでしょうか。
不必要に脂(サシ)が入っている牛。
野生の(いるのかどうかわかりませんが)牛は
いかにも肉が硬そうで臭みもあるように感じますが、
これが天然というものではないでしょうか。
しかし肉はすべて養殖がいいというわけではありません。
最近は日本でも認知されてきた冬の時期の「ジビエ」。
イノシシや鹿、鴨など狩猟された肉は養殖ではないはずです。
つまり、同じ肉類でもなぜに高額食材が
「養殖」と「天然」に住み分けされているのでしょうか。
友里には不思議でなりません。
バッファローはいかにも硬そうで、避けたい気がしますが、
欧米では日本ほど手をかけて牛を育てていないはずです。
そしてもっと安い。
なぜ牛だけ必要以上に手をかけた
脂の入りすぎた肉が最高といわれているのか、
そこに何かしら矛盾を感じるのは友里だけでしょうか。
脂ギトギトの養殖物の代表である
「ハマチ」が素晴らしいと公言する人は居ないはずです。
肉のハマチである「ブランド牛」がなぜ高額で評価が高いのか、
あの味わいが「うまい牛肉」と
長年に渡って刷り込まされてしまったからかもしれません。
巧みに消費者が誘導されてしまった結果ではないでしょうか。
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