| 第230回夏以外の時期にはリピートしたい、山さき 神楽坂
 オーナーとしては若い女性シェフは、電話での予約受付も一人で奮闘しています。
 各コースの細かい説明要求にも嫌な声色をつかわず、
 最後まで説明してくれる態度は好感が持てました。
 年も場所も近い「小室」とはまったく対照的な対応です。
 かなりの人気店のようで、キャパも少ないせいか予約を取りにくいのが難点です。
 コースは7千円が「寄せ鍋」と「鴨の巌石鍋」。
 8千円が「ねぎま鍋」、
 冬の時期はそれ以外に「ふぐコース」が1万2千円と
 本家の「なべ家」の約半額です。
 しかも、突き出し以外に酒肴やお造りもついていますから
 本家と比べると破格に安い。
 各コースで共通しているのが、
 江戸風といわれる突き出しや造りです。
 玉子焼きや、
 海苔しぐれという梅を和えたものがこの店の定番です。
 そして、ヒラメの造りにあわせる「炒り酒」も特徴があります。
 江戸料理は甘みと梅味なのでしょうか。
 玉子焼きやおひたしはかなり甘みを感じます。
 また梅干を酒で煮詰めた「炒り酒」は、
 ヒラメなど白身に合うかは別にして
 1回は経験しても良いでしょう。
 本家ではお通しのあと直ぐに鍋に突入しましたが、この店のシェフは修行時から客の不満を感じていたのでしょうか。
 価格を下げるだけでなく、何皿か酒肴を出すことによって、
 CPの良さを演出してきております。
 ただ惜しむらくは「お姉さん」。なんと、このお年を召した着物姿の女性も
 本家からヘッドハンティングしてきたようです。
 ちょっとタイミングがずれる受け応えと、
 すべてを仕切りたがる鍋奉行振りに、
 ちょっと私は腰が引けてしまいます。
 シェフと同じような年恰好の女性なら落ち着くのですが、
 人件費の問題と考えます。
 頼んだ「ねぎま鍋」にはぶつ切りのマグロが一人3切れ。よく火を通したほうがおいしいと
 ホール担当のお姉さんはとことん鍋底に具を沈めます。
 もう一つの主役の葱の量が意外に少なく、
 それをクレソンやセリで補っているのですが、
 4人で一人8千円ということは総計3万2千円。
 具の皿をじっと見て実原価を考えると、
 破格に安い値付けと言われていますが
 しっかり利益を上げているのではないと思ってしまいます。
 なぜかワインの品揃えもあり、5千円前後と背伸びをしない安い、CPの良いものが揃えてあります。
 シャンパーニュが6600円だったことを考えると
 ワインの値付けも安いでしょう。
 お燗や冷酒もリーズナブルな価格で揃えており、
 予算はかなりワインを飲んでも一人1万2千円。
 汁ぶっかけご飯もついて、女性ならば満腹となります。
 <結論>この量、この味、この食材ならば
 一人1万数千円はCPが良いと考える。
 本家の「なべ家」があまりに悪すぎるだけに、
 かなりイメージでは得しているでしょう。
 この店を知ったら、高すぎる「なべ家」へ行く気がおこりません。
 店に出す鍋を主体にした江戸料理で、2店の差はないと考えます。
 夏の時期に鍋を食べに行く気がおこるかは別問題ですが。
 |