| 第177回重くて安くないがおいしい、「北島亭」
 四ツ谷にある小さなフレンチですが、マスコミの評判は上々の「北島亭」。
 「東京いい店うまい店」では、
 「ロオジエ」の上をいく5つ星にランクされています。
 四ツ谷駅から徒歩で10分、
 目立たないといわれていますが、
 フレンチとはイメージがかけ離れる電飾看板が出ていますので、
 入居しているビルはすぐわかります。
 間口の狭い入り口を入るとそこは「北島ワールド」か。一見して、住宅街の小料理屋か居酒屋へ入ってしまったかと
 錯覚してしまいます。
 客の年齢層が高いのです。平均年齢は50歳くらいでしょうか。
 男性客だけのグループも多く、あとはオジサン、オバサンだけ。
 30代や若いカップルの姿が見えません。
 しかもほとんどの男性が上着を脱いでおりました。
 金額的には気軽な店ではないのですが・・・。
 メニュはホワイトボードの手書きです。前菜が10品以上で3〜5千円、
 メインも魚、肉を合わせて10品以上で4〜6千円と
 グランメゾン級の設定です。
 コースはシェフお任せなのですが、
 3皿で8千円、4皿で1万円、5皿で1万5千円です。
 「ロオジエ」でもコースは1万6千円程度でありますから
 この強気には驚きです。
 満席だからでしょうか、2人のスタッフだけでは手が回らないのか
 料理の説明も片手間でストレスを感じます。
 この価格設定とサービス料10%をとるにしては、大変不満です。
 売れ筋はアラカルトではなく4品のコースのようです。人気の「うにコンソメ」が含まれているので、
 初訪問の客はこのコースで充分でしょう。
 誰もが感じることですが、とにかく各ポーションが大きい。どの皿もアラカルトとしても通用する量です。
 注目の「うにゼリー」は確かに量もありおいしいですが、
 最近何処でも似たような料理を目にします。
 皮目に胡麻をつけてソテーした魚も
 調理法は珍しくありませんが完成度が高い。
 仔羊もボリュームがあり、しかも塩を限界まで使っていて
 私の好みではありますが、毎日食べたら早死にするでしょう。
 もう一つの人気料理である頬肉の煮込みは、
 肉のカットや質には感心するものの、
 煮詰めが私には物足りませんでした。
 売れすぎで詰める暇がなかったのかな。
 ワインの値付けは高くない。無名の造り手ながら‘90年前後と古めの物を
 1〜1万5千円で揃えていますし、
 評価の高い'82のボルドーが
 現在の小売に近い価格であり良心的な設定と考えます。
 しかし、グラスは貧弱、雰囲気は小料理屋、
 そしてビストロ級のポーションの料理ですから
 高級ワインが合うかは別問題です。
 品数、量、主張のある味付け、とワインを飲むと一人2万円は軽く超えますが、
 年に数回、お腹を空かせて飛び込んで見たい店と考えます。
 「ロオジエ」と比べるのに無理はありますが、
 評価本でもたまには当たりがありますね。
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