| 第176回ここでも天然鰻が食べられていない、「尾花」
 これだけ大箱な、観光地の団体客専門の食堂の雰囲気の店なのに、料理評論家、フードジャーナリストに釣られた客で
 いつも一杯です。
 夏の繁忙期には、昼でも入りきれない客で行列が出来ています。
 客は並んだ順に、羊飼いに追われる羊のように靴を脱いで、
 ちゃぶ台の前に座らせられます。
 着席すると、スタッフはすぐさま注文するよう迫ってきます。鰻を焼き上げるのに30分から1時間要すると
 客に我慢を要求する注意書きがあるのに、
 店側がせっかちなのはいかがなものか。
 暖簾やお土産の袋には、「天然」という文字がありますが、ここの標準、つまりほとんどの客が食べている「鰻」は養殖です。
 「うな重」は2300円から3種ほど。
 時価として、「筏」、「中串」、「大串」というものが
 メニューにあり、これらだけが「天然」です。
 「天然鰻を食べたい」と希望すると、
 滅多にない注文なのでしょうか、
 女性スタッフが毎回厨房へ確認に行くところをみると、
 天然鰻の入荷も限られているのでしょう。
 「尾花」の「うな重」(養殖)の価格は他の店と比べて高くはありません。
 しかし、オーダーしてから捌いて焼き上げるという理由で、
 40分近く待たせられるため、
 客は「うざく」(1100円)や「うまき」(1400円)、
 「香物」(500円)といった
 ツマミとビールなどの酒類をとって間を持たせることになり、
 結果、売上げ増に貢献させられます。
 甘めの酢が気になる「うざく」は別にして、
 量もたっぷりの「うまき」はお得でしょう。
 ビールと「うまき」だけで許されるなら、
 一人で入店した人はこれで充分です。
 待たされてでてきた「うな重」は悪くはないがどこが東京一、日本一なのか他の店との違いがわかりません。
 ただの柔らかい、一般においしいと言われる店のレベルの物。
 店のスタッフや近傍の客が注視する中、
 出てきたこの日の天然物「大串」は、
 その厚さ、長さに圧倒されます。
 とても鰻にはみえない大きさの蒲焼。
 皮も厚くて食感はよく、
 身も「うな重」の養殖ほど柔ではありません。
 焼き魚と感じるのですが、
 味わい・風味に「養殖」と「天然」の違いを感じないのです。
 「野田岩」の「天然」は柔らかすぎたが風味だけはありました。
 食感と風味を満足させてくれる「天然鰻」は
 東京には存在しないのでしょうか。
 <結論>「天然鰻」が勝手に一人歩きしている店だが、
 実際天然を食べている客はほとんどいない。
 しかも、食感は違うが風味や味わいから考えると
 一皿13000円以上払うほどのものでもない。
 勿論、普通の「鰻」も悪くはないが傑出しているとは思えない、
 他の有名店のレベル。
 東京一との料理評論家、フードジャーナリストのスリコミに、
 読者、一般客は洗脳されてはいけません。
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