第158回
鮨屋のタブーに挑戦 その5
有名高額店のネタに差はないのでは?
「すきやばし 次郎 旬を握る」という本を
前に読んだときに気がつきました。
この本は、我々素人にもわかりやすく、鮪の部位を写真付で載せ、
色々なネタの旬についての考え方などを
小野二郎氏の言葉でわかりやすく説明しています。
ある意味で画期的な鮨の本ともいえるのです。
小野氏の独善的、自慢話のオンパレードに
気を害さなければの話ですが。
その一文に、鮪の仕入れのことが書かれてありました。
いかに鮪、特に中トロ、いや大トロが高いか、
一貫数千円するのは当たり前だと力説しているのですが、
築地で仕入れる場合は、
有名鮨屋は同じ中卸から仕入れているようです。
しかも、同じ鮪を。
つまり、良い鮪をその中卸が競り落としたら、
常連である有名高級鮨屋はくじ引きで、
各部位を購入することになるそうです。
今日は、A店は腹筋のカミ、B店は背筋のナカ、C店はシモと
中卸から鮨屋は分け合って仕入れているというのです。
しかも50万円単位で。
つまり、そのシンジケートに入っている店、
たとえば「次郎」と同じ中卸の鮨店は、
結果「次郎」と同じ品質のマグロを
ずっと仕入れていることになります。
なにも、「次郎」だけが最高の鮪ではないのです。
その日の順番によっては、「次郎」より良い部位の鮪を
仕入れていく店もあるわけなのです。
この本では、鮪以外の中卸のことには触れていないようですが、
「ゆり上」のアカ貝にしても北海道のウニにしても、
第一級品を仕入れる卸業者は限られてくると想像されますので、
同じことが言えるでしょう。
新参の鮨屋はそのルートに食い込めないので、
最高のネタを仕入れるのが難しいのかもしれません。
ある週刊誌の編集者が言っていましたが、
「さわ田」の主人も独自のルートというか、
熱意で業者を開拓しネタの質を上げたということです。
つまり、銀座、六本木、赤坂などの高額有名店では、
マグロをはじめネタの質は
同ランクのものに遭遇するのではないでしょうか。
ディスクローズという言葉を盛んに聞きます。
鮨屋も、購入業者を開示することで、
一般客に店の選択肢をふやさせるサービスが
必要なのかもしれません。
でもそうなると、わざわざいやな思いをしてまで
「次郎」へいく客が減るかもしれませんね。
同じ質のネタを扱っている他店へ流れてしまうでしょう。
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