第103回
ボツになったある雑誌への取材回答 その5
掲載した店からの出版社への抗議について
●グラフ社よれば、本の発売後、掲載したお店から
抗議のお電話があったようですが、その件はご存じでしょうか?
それらしき話は聞いています。
でも、抗議の電話では、氏名や店名を名乗らないので、
はっきり掲載した店かどうかわからないそうです。
「カード手数料は6%が当たり前だ、常識を知らないのか」
との電話もあったそうですが、
いくつかの独立系のカード会社を除いては、
交渉によって5%以下に押さえられるのも事実です。
特に人気店では当然引き下げていると推定できますし、
それは営業努力としてやらなければなりません。
しかも問題にしているのは
客に手数料を転嫁しているということです。
「ワインはその購入時期などによって仕入れ値が違う。
高い安いといい加減なことを書くな」
といったクレームもあったようです。
でも、最近の店は新しいワインしか置けないのが現状です。
つまり、購入時期は最近ということです。
値付けの評価に取り上げている
ノンヴィンテージのシャンパーニュの仕入れが、
3000円前後というのはちょっとしたワイン好きなら常識です。
それを7000円で売っていて安い、1万円では儲けすぎ、
と述べているだけです。
また、たとえ、古いヴィンテージ、古酒があったとしても、
普通の経営者や料理人よりは
現状の市場価格、オークション落札価格に、
私は精通していると自負していますので、
判断を大きく間違えることはないと考えます。
その他、同業である料理店経営者、料理人からも
取り上げていないからでしょうが、
多くの賛同の電話、手紙、
そして邱永漢のHPへメールをいただいているのも事実です。
それらはほとんど実名でお便りをいただいております。
「同感だ」、「よく言ってくれた」、
「かなりプレッシャーがかかると思いますが、
今後もかんばって続けてくれ」といった内容です。
中には、色々取り上げた料理人を含めて、
裏話を教えていただく場合もありますが、
自分で確かめたわけではないので、転載はしていません。
よくフードジャーナリストたちから、
「悪口を言っても駄目だ。
店は常連を含めて客が温かく育てるものだ」
という趣旨の言葉を聞くことがあります。
確かに耳に聞こえの良い言葉です。
おいしい料理を出そう、サービスを良くしようと
一所懸命努力している店は、
たしかに温かく見守ってサポートしてあげることは
客としても必要かもしれません。
でも、今回取り上げた店は
ほとんどが功なり名を遂げてしまった人気店であります。
人間で言えば、一人前の大人、
中年や初老に値する店もあるでしょう。
若いうちから甘やかされ、持て囃されて育った人間と同じく、
これらの店はもう普通に温かく見守っても、
良くはならないのです。
私は「経営者・料理人の性格」が一番重要だと主張しています。
前向きで謙虚な人でない限り、
すでに性格は出来上がっておりますから、
温かく見守るだけでは効果がないと考えます。
一般客には、店選びとして、
今までの店に迎合した情報と違った物を提供して、
選択肢を広げていただきたいと思います。
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