| 第102回ボツになったある雑誌への取材回答 その4
 取材方法や覆面取材の理由について
 ●取材方法についてお訪ね致します。取り上げたお店の基準とはどのようなものでしょうか。
 約60店舗でしょうか。対象としたのは、料理評論家、フードジャーナリストから
 高評価を得ている店を優先しました。
 そのような店は過剰評価されている店も多いと踏んだからです。
 読者・一般客が評価本を読んで出かけていって
 がっかりする確率が高い店が多く、
 まずそこを問題にしたかったからです。
 持論の一つ、立地の悪い店で
 妙に褒められている店も積極的に取り上げました。
 しかし、自腹取材なので、今までに行ったことのない店があり、
 残念ながら紙面の都合もあって、
 今回は取り上げられなかった店も結構ありました。
 こんなことを書くとまた文句を言われそうですが、
 いわゆる「鉄人の店」などは、
 既に一般客も評価する対象からはずしている、相手にしていない、
 と判断して取り上げませんでした。
 結果は見えていますからね。
 あとは、ホテルの店、そして「マキシム」など老舗も
 今更私がどうこう言う前に、
 既に世間で評価付けは終わっていると判断してはずしました。
 ●取材は一回いっただけの評価なのでしょうか、
 それとも複数回訪れての評価なのでしょうか?
 私はここ数年のグルメブームから食べ歩き始めたわけではなく、かなりの期間食べ歩いているので、
 新しい店以外は複数回訪れています。
 ただし、「追い出された店」など無茶苦茶な店や、
 予約が非常にとりにくい店など一度しか行けなかった店は
 いくつかあります。
 しかし、脱稿後、また出版後に再び訪れている店もあります。
 店と客は一期一会です。
 料理人の体調やその他不可抗力の条件で
 たまたまおいしく感じなかった店とか、
 まだ可能性のある店は再訪しますが、
 「追い出し」などは店のポリシーに関するもの。
 これは根本的に反省というか
 経営者が変わらないと直らないと思いますので、
 再訪はしていません。
 ある程度の年になりましたら、
 人の性格はなかなか直らないと考えます。
 ●取材に当たっては、事前に取材の意図を伝えぬ
 いわゆる“覆面取材”の方法をとられているようですが、
 その理由とは何でしょうか?
 これは私の評価の根幹に位置するものです。読者・一般客を対象にした本は、
 一般客が食べる料理、受けるサービスを評価しなければ
 読者の役に立ちません。
 お金を払って購読してくれるのですから。
 実名取材ですと、特別料理を特別待遇で食べることになります。
 この事実は、山本益博氏をはじめ
 多くのフードジャーナリストたちが著書で認めていることです。
 「東京いい店、うまい店」でも
 巻頭に実名取材の弊害が書かれています。
 ですから覆面取材に徹しております。
 「友里」で入店しようとしたら、
 おいしい特別料理を出してくれるより、
 塩をまかれて追い出される方が多いかもしれませんね。(笑)
 一般客を読者として対象にした料理評価本は、こんな特別料理を食べた、こんなに優遇してもらった、
 料理人とこんなに親しい、などを列記する
 「自慢本」であってはならないと考えます。
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