第90回
料理評論家、フードジャーナリストの習性・実態 その8
ただの訪問日記は読者に必要なのか
最近雑誌などに、フードジャーナリストや食通の方の
料理店訪問日記のようなものを良く目にします。
はっきりとした日時を入れるのではなく、
「○月×日 レストラン・・・」といった表題で、
お店や料理人とのツーショット写真を載せ、
店構えや食器類などを褒めて、
当たり障りのない料理紹介でくくっているだけです。
小山薫堂氏もこの手法で連載されています。
すべての店を淡々した口調で述べているこの手の訪問日記ですが、
お店の存在を知る、といった点では効果があると思いますが、
その他は読者に何も与えてくれません。
店のガイドでしたら、巷溢れる紹介本でその任は充分果たせます。
ポリシーを持って店の評価をしようとしているわけでもなく、
問題提起のかけらもない。
すべてがあっさりと料理人に心地良い口調で書かれている
この手の訪問日記は、フードジャーナリストの記事同様、
真の料理人、店の姿を追及するといった
読者の利益にまったく結びついていません。
雑誌の編集担当が特集記事を組むのであれば、
ただの紹介でも仕方がないでしょう。
読者はシビアな評価だけを望んでいるのではなく、
広く情報だけをも欲しているからです。
でも、わざわざ書き手として依頼したのに、
編集担当でも書けるような内容のコメントを、
ただ淡々と述べているだけで、読者が満足していると思えません。
原稿料をとって書かれるこの手の記事は、
書き手のポリシーを前面に出して記さないと、
誰の記事だかわからない
特徴のない文になってしまうと思うのです。
読者も、より質の高いコメントを要求する時期が来ていると
私は考えます。
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