| 第75回ソムリエの実力・実態 その8
 一見や嫌な客からのワイン注文の断り方
 誰でも傲慢で嫌な客とは関わりたくないもの。いくらお金を見せられても、自分のポケットに入るわけではない、
 雇われソムリエは、売りたくない客に
 ワインを売り惜しみしてきます。
 また、残り少ない希少なワイン、値付けを安く設定した目玉ワインに気がついて飲ませろ、と
 いってくる一見客を優遇する店は少ないでしょう。
 でも、私は営業的には反対ではないかと思っています。
 常連客はその店で顔が効くようになったと思うことで
 満足して通い続けます。
 少々のことでは他の店に浮気をすることがないはずです。
 同じ鮨屋に行けば行くほど請求額が高くなるのに、
 しつこく通い続ける常連客の姿をよく見かけるのと同じです。
 一見客をリピートさせて常連に仕立て上げ、
 安定売上げを確保したいならば、
 私は一見客を大事にする方法もあると思うのです。
 しかし、多くの店で一見客は大事に扱われることがありません。うっかり安い価格設定でリストに載せてしまったワイン、
 残り少ない希少ワインを
 一見客や気に入らない客が指名してきた時、
 ソムリエが使う断り方法がいくつかあります。
 一つは、「今閉じていて飲み頃ではありません」。彼らソムリエには、ワインの飲み頃がサイクルのように変化して、
 必ずしも一定に熟成し続けないといった、
 理論的には証明出来ない説をよく公言するものです。
 昨年はおいしかったが、今年は閉じてしまっている。
 またはその逆も。
 ワインは個体差が激しいもの、
 厳密にはどれ一つとっても同じものがないようなものなので、
 サイクルで変わるのではなく瓶差の違いだと私は思います。
 ですから、このような場合は、
 「閉じたワインのほうが好きだ」と言って
 開けてもらうと良いでしょう。
 多分、飲ませたくなかったおいしいワインに出会います。
 もう一つは「もうリスキーになっている」。比較的古いワインを頼んだ場合の断り方ですが、
 状態がどれも悪くなっているワインを
 リストアップするなと言ってやりたい。
 これも実は本音では、
 「一見客に飲ませるには、店にとってリスキーなだけだ」と
 考えてください。リスク好きな客として挑戦すると言われれば、
 断るわけにはいかないでしょう。
 またもや、おいしいワインに出会う確立は高い。
 最近は敵もさるもの、あっさり「すみませーん。もう売り切れでした。
 チェックミスでーす」と、頼んだ瞬間答えるソムリエがいます。
 本当は在庫しているのでしょうが、
 こうはっきりミスを認められるとその後突っ込めなくなります。
 常連とまったく区別するな、とは言いませんが、
 一見をもっと大事にしたほうが
 集客に繋がることをわかって欲しいものです。
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