自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第74回
なぜ高い「イゾラ」チェーンが流行っているのか

白金に第一号店が出来てから、
瞬く間に都内に多店舗展開してきた「イゾラ」チェーン。
出資は「グラナダ」という、
「リストランテ キオラ」(麻布十番)や
ミラノの2つ星イタリアンの出店「サドレル」(六本木ヒルズ)
などを幅広く展開している会社です。
白金店のほか、銀座にも数店、そして丸ビルなど、
気安く入れるはずのピッツェリアが
結構満席でなかなか入店できません。
特に集客力が落ちてきたと言われる「丸ビル」でも、
この店は未だに行列が形成されています。

各本支店によって多少の価格差がありますが、
原価率の低い「マルゲリータ」を考えてみましょうか。
生地台にトマトソース、モッツァレラに
数枚のバジルを乗せたものですが、1600円〜1900円です。
ピッツァの窯職人はどうみても若い、
あまり経験を積んでいるようには見えない人たち。
街場の「トラットリア」、「ピッツェリア」では、
この「マルゲリータ」が1200円前後で売られていますから、
「イゾラ」はかなり強気の価格設定のはずなのです。
でも、各店は若い人を中心に連日満席。
なぜ流行るか、以前から不思議だったのですが、
拙著で「イゾラ」を取り上げ高過ぎると述べようとした時、
編集担当者から意外な発言を聞かされました。
「ピザーラなど宅配ピザでも2千円前後ですから
高くないのではないですか」。
目から鱗でした。
もともと「ドミノピザ」に始まったこの宅配ピザ、
30分以上配送にかかったら500円バックするのがウリでした。
つまり、アルバイトの配送料金として
500円以上が上乗せられた価格体系なのです。
このキャッシュバックシステムは、
配送員に危険だとして一方的に廃止されましたが、
価格体系はそのまま残ってしまったようです。

普及してしまった宅配ピザの価格を標準として考えてしまったら、
窯で焼きたてで食感が良い同価格、
もしくは安い「イゾラ」のピッツァが高くない、と
感じてしまうのだと思います。
「イゾラ」のピッツァに、巷の安い店との価格差を納得させる
傑出したものを感じませんが、
料理価格よりかなり高いワインを豊富に揃えているのは必見です。
支店によっては、絶対額ではかなり高くとも、
一般の仕入れ価格と比べたら
割安な値付けのワインに出会うこともあります。
ピザで高級ワインを合わせて飲む事に、
違和感を持たなければの話です。


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