第368回
八万四千の毛穴から病気退散?
白隠禅師は腹式呼吸法と内観法によって、
病気が自然快癒していく様子を、
北宋の詩人・蘇東坡(そとうば)の養生修行の例をあげて、
著書「夜船閑話」で、次のように述べています。
「蘇内翰(蘇東坡)曰く(略)
散歩逍遥して、
務めて腹をして空からしめ、
腹の空なる時に当て、
すなわち静室に入り、
端座黙念して出入りの息の数を数へよ。
一息より数へて百に到り、
百より数へ放ち去て千に到り、
この身 兀然(こつねん)として(略)
一息おのづから止まる。
出でず入らざる時、
此の息 八万四千の毛竅(けあな)の中より
雲蒸し霧起こるが如く、
無始劫来(注・始めからある)の諸病自ら除き、
諸障 自然に除滅する」
古来の仙人道の書を読んでいると、
厳しい不老長寿の仙人修行には、
辟穀(へきこく)といわれる断食法や
丹田呼吸法がありますが、
蘇東坡(そとうば)もその伝に沿って
養生に励んだのでしょうが、
この一文を読むと、
《宇宙自然のエネルギーと
わが身のエネルギーが一体化する》ときに、
まさに《いのちのバランス》が正され、
ストレスも難病も自然治癒できるということが、
なんとなく分かる気がしませんか?
それにしても、呼吸養生によって、
「病気が八万四千の毛穴から、
霧のように退散して出ていく」
「自然快癒がもたらされる」というのですから、
じつに自然でゆったりとした境地でいい表現ですね。
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