第365回
白隠禅師の《不老長寿法》を読む・1
≪養生は爆発だ≫――、
帯津医師の≪心のときめき≫理論の
論拠の1つとなっているのが
フランスの哲学者・アンり・ベルクソンの
≪エラン・ヴィタール≫(生命の躍動)というキーワードですが、
日本古来の禅僧の人たちの座禅瞑想の修行法にも
帯津医師は大いに共鳴しています。
帯津さんは気功の達人でもありますから、
その腹式呼吸と瞑想によって
生命エネルギーを高める鍛錬も積んでおられますし、
自ら、病院内でも気功道場を作り、
新呼吸法『時空』と命名して、
ときめきの養生法を実践しています。
さて、帯津さんが共感する禅僧の1人が、
白隠(はくいん)禅師で、
駿河の原(いまの静岡県沼津市)に
生まれ育った江戸時代のお坊さんです。
この人は「駿河に過ぎたるものが二つあり、
一に富士山、二に原の白隠」と謳われたほどの名僧です。
帯津医師は、著書「養生は爆発だ!」の中で、
≪白隠禅師と「いのちの爆発」≫という項目を立てて、
白隠禅師の名著「夜船閑話」(やせんかんな)
を紹介しています。
15歳で出家し、禅宗の座禅修行にはげみ、
24歳で悟りを得たのですが、26歳の時に
修行の過労で、重い神経衰弱を伴う
結核のような症状に見舞われてしまうのです。
そのとき、京都の山中に住む白幽子(はくゆうし)
という仙人から、腹式呼吸法と内観法を学んで、
まさに自らの生命エネルギー(=気)を高めて
心身を回復させたというのです。
その体験的な腹式呼吸と内観法による
生命力エネルギー(=気)の向上法を
まとめたものが「夜船閑話」(やせんかんな)です。
ちなみに、内観法とは、
精神集中による自己発見法のことです。
いわば、白隠禅師自身の、わが身を挺した
≪結核からの生還闘病記≫といったらよい本です。
座禅修行の最中に病気になってしまう
若輩の僧侶たちに向かって
これが「理想の病気治療法だ」とすすめ、
また多くの人に向けて、
これぞ「不老長寿の秘訣法だ」と、
声高に強調しているところが
なかなかのド迫力があって、面白い本なのです。
読みたいと思う人は高木峻さんという、
箱根・山北の医師が注釈解説をした
「白隠禅師夜船閑話」という本が、
読みやすくて面白と思います。
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