第318回
与謝野晶子に学ぶ≪いのちのパワー≫2
群馬県猿ヶ京ホテル(※1)の女将であり、
民話活動のリーダーであり、三国路・与謝野晶子文学館館長で
ある持谷靖子さんとの10ページ対談=
「民話と与謝野晶子に学ぶ――日本の伝承力」
(いま発売中の月刊誌「むすび」10月号に掲載中)(※2)
の抜粋紹介の続きです。
*
関根 持谷さんの書いた本を
読ませていただくとよく分かるのですが、
与謝野晶子という人は歌人としてだけでなく、
幅広い分野でエッセイや評論を発表してきました。
女性の自立とか、日本人の欠落している情操的な部分について、
また、男女の平等とか、自由とか、
今だったらあたりまえのことを、
明治、大正期に、声高に唱えた自由人でした。
持谷さんの与謝野晶子研究書の中でも、
とくに「与謝野晶子の家庭教育論」という評論は出色ですね。
最近、藤原正彦さんの「国家の品格」とか斉藤孝さんの
「声に出して読みたい日本語」という本で、
日本語が持つ情操の豊かさを見直す機運が高まっていますが、
日本人が欧米に習った合理性とかの
モノマネ主義とかそういうことじゃなくて、
自然に日本人らしい考え方にもとずいて
教育をしたらいいんじゃないかという話について、
持谷さんも書いておられます。(略)
80年もまえに、与謝野晶子はあの厳しい軍国主義の時代に、
一人一人の自由、平等について
果敢に発言した女性だったわけですが、
持谷さんは晶子のどんなところに魅力を感じたのでしょうか?
持谷 先生のおっしゃるように、歌人でもあり、
小説も書かれて、評論家でもあり、古典研究家でもあり、
童話作家でもあり、非常に切り口が多いもんですから、
論評の的にされて、教育問題論じても出てくるし、
政治問題でも出てくるし、そんなことでと当時、
晶子は標的にされたんですけど、私は思うことはですね。
さっき経済的、自立って言いましたけど、
やっぱり人間が真剣に生きるってことは、
だんなさまのおかげで、ヌクヌク育って、家の中にいて、
そこで趣味を生かすのも、それも幸せな道ではあるけれども、
そこに、自分で働いて、自分のお金で生活する、
その喜びというのは経験しないと分からない。
晶子は経験しちゃった。わたしも経験しちゃった。
やっぱりお金をもらうと、そこに平等なりえるのかということが、
常にあって、やっぱり与謝野晶子はあれだけのことをできたのは
11人の子どもを養っていかねばならない、
稼がなくちゃ生きていけない、
そういう切羽つまった人間の本能のようなものが働いて、
それが晶子にああいう、多岐にわたる、何でもくらいついていく、
そこにいったような気がするんです。
どうしてあんなに子供を生んだのか、
考えるとやっぱり夫をすごく愛していた。
そこに行きつくので、
これはすごい女性だなと心底から思うわけですね。
女性論、もうそれをこえた人間として、
やっぱり、子供を育てなきゃならない、
食べなくちゃならないそれが一番の晶子のエネルギー。
誰もいわないですけど。(中略)
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続きはまた明日。
※1 http://www.sarugakyo.net/
※2 http://www.macrobiotic.gr.jp/
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